一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

レッスン録  フレーズ集ほか 12,496字   563

レッスン    563

特別メニュー

課題曲レッスン

フレーズ集

「TAXI」「安奈」

「愛は君のよう」「夜は恋人」

「この愛に生きて」「タンゴ・イタリアーノ」

 

 

 

特別メニュー    360225

 

フレーズ集

 

0.コーリングユー

  1.踊りつかれたディスコの帰り、これで青春も終わりかなとつぶやいて 

  あなたの肩をながめながら やせたなと思ったら泣けてきた

2.せつなくなるだけ Hold me tight 大阪ベイブルース 俺のこと好きか あんた聞くけど

3.あんたにあげた  あの日々を  今さら返せとは  いわないわ

 

4.枯葉(サリナジョーンズ)

5.スターダストメモリー(サリナジョーンズ)

6.モナリザ(ナタリーコール)

7.Thou swell(ナタリーコール)

8.グルーベリーセル solny(フラッツドミノ)

9.ミスティ ゼムゼアアイズ(ドリーベーカー)

10.I can see cleary now(ホリーコール)

 

11.マックザナイフ

  セイリング 

  虹と雪のバラード

12.コメプリマ

  アルディラ

13.メロディ

  デェイ

14.  ニンナナンナ あなたにーンナナンナ

 

 

[ポイント]

 

1.音色 2.感情 3.ハミング 4.ビボバ(アドリブ) 5.低音部 発声 

6.ラーラララ(メリハリ) 7.聴き方 8.ドゥダバラ 9.シャウト 10.音の連結

 

 

 

 

レッスン①・③     360109

 

 

「息吐き」は、のどを痛めませんし、どこででもできるトレーニングです。これが、ベースのベースのトレーニングです。あまり、いろいろと考えたくない人は、こういうことを2年間ずっとやっていれば、人との差も確実につくでしょう。

 

「ハイッ」

 息だけで、声にせずにやってみます。息で「ハァーッ」とコントロールできるようになれば、声が浮き、ひびきもでてきます。体ではき、体で切るようにします。

 次に声をつけて「ハイッ」と言ってみます。息で言っていたまま、そのまま息を送り声にします。歌の場合はひびきが大切なので、あまり胸に押しつけすぎずに、理想のポジションをイメージしてとりにいきます。

 のどを開き、体にポジションを入れ、息を深くためて準備をしてたら「ハイッ」といいます。体、息、声との結びつきを感覚におとします。「ハ・イ」と2語にならないようにし、「ハイッ」を一拍にとります。

 体をまげて、息を「ハァーハァー」と出してみます。そのとき、息は体で切るようにし、フォームとしては、肩をあげず、猫背にならないように気をつけます。口を開け放して、背中に息を感じましょう。スポーツしたあとに、深く呼吸するときの感覚です。

 1回、「ハァー」と吐いて、しぜんに体が戻る(息が入ってくる)のを待ち、次の呼吸に合せて「ハッ」と声を出します。長く伸ばさず、短くかけ声のように体で切ってください。体イコール声だと思ってやってください。

 

「ハイ ラオ ララ」

 まず、「ハイ」「ラオ」「ララ」と一拍でとり、声に出してみます。セリフのところで音声のイメージ、感情が7、8割入っていますので、それをつかめれば、あとが楽です。しゃべっているところの声自体を、音楽的な部分でつかんでおきます。

 胸に入れようとすると、押さえつけてしまうので、息がしぜんに流れるところまでつくります。下からより深く吐いていけば、ポジションが下がると思ってもらえるとよいです。

 次に音を一音つけて「ハイ ラオ ララ」と言ってみます。口のなかで操作せず、声そのものが歌い出すまで待ちます。

 体を使い体を入れてやるのですが、力を入れようとしているところが体や重心にいっていません。上の方に重心をおくと、つまってしまいます。のどでコントロールすると、声がまえに出てきません。息が聞こえる、感情が聞こえる方が、歌を歌うときに楽です。

 一瞬でよいので、きちんと踏み込んでください。「ハーイ」のように、時間を長くとってしまうと、密度が薄くなってしまいます。芯でインパクトを捉えてください。

 

 

 

課題曲レッスン 「TAXI」「安奈」」

 

「タクシーに 手をあげて」

 

 頭の「タ」に体をもっとつけていきます。「タッ」だけ短く「ハイッ」と同じように言ってみます。おそれずに、大きな声で言いましょう。

 

「タッ テッ アッ」

 体で一つひとつ調整して切ります。

 

「タァーてーあー」

 この3ヵ所をきちんと押さえ、「タァー」のなかには「クシーに」が、「てー」のなかには「を」が、「あー」のなかには「げて」が入っている感覚でフレーズをつくります。体に読み込み、フレーズへいくと、流れが出てきます。また、体を使うことと声をまえに出すことを、同時にやります。両立させるのは難しいですが、力を入れるが力まないフォームを、体の感覚でつかみます。

 

 

 

「安奈」(甲斐バンド

 

 「アン」できちんと芯を捉えて、「ナァー」に巻き込むのも一つの方法です。どこにフレーズをつくるのかは、その人にもよりますが、「アンナ」の「ア」のあとにクレッシェンドをかけて、息を流すのもヴォリューム感がでます。ポイントをつくることです。「アンナ」が表現になっていなければ、そのあとからは、歌にはなりません。その部分が最低限の要素です。その部分での力量をもっているのに、それ以外のところで歌をつくろうとしている人が多いです。いかに歌わずに、単に息を流すだけで歌に聞こえさせるかが、ポイントです。

 

「アンナ おまえの あいのひは」

 どこまでにぎっているのか、どこで完全に捉えるのが目的です。計算せずに、息の流れのなかに入れていくことと、配分を練り込むことです。ことばで言って、フレーズになっていたら歌になります。

 

「ヒーロー」

 「ヒ・ロ」と2拍にならないように、1拍の感覚です。「ヒー」の「イ」のところで入れるから、「ロー」でひびき解放されるのです。「ヒィー」で読み込めないと、「ロー」で余って間伸びしてしまいます。「ヒー」でばっと入ってばっと声が出せる「瞬発力」がロックには大切です。大きく出すということは、長く伸ばすことではありません。

 

「おまえを はなしはしない」

(ソソソソ ソレレシシラソ)

 

 表現は、ギリギリの方が見えてきます。「は」で縦に捉え、「はぁーなし」までフレーズで保ち、「はなし」の「し」、「しない」の「し」で入れ込んでいきます。最後の「~はしない」を手を抜かずに体を入れておきます。

 深いところ、シャウトのポジションをとりながらひびかせる分には構いません。

 

 

 

 

課題曲レッスン 「愛は君のよう」   ①    360315

 

 

 

「トワ きみにあった」

(ラー ソファミドーラ)

 

 一つひとつの音をとろうとすると「きみに」の「に」と「あった」の「あ」の間は6度の幅があるので、難しいでしょう。音というより感覚で捉えるようにしてください。

 3連の流れを感じながらのせていくようにしましょう。日本語としてのことばは、あまり重視しなくてよいです。

 

 すべてアップビートで入ってきます。「きみに」の「に」を入れていきます。「あった」の「あ」は前の「に」で入れているので、「に」のなかに入れて少しういてきます。動かすところと止めるところを意識してください。

 

 

「しろい バラを てに」(ラーー ソファミ ドラ)

 

「しろい」とことばで一つに捉えます。「し・ろ・い」とバラバラにならないようにしましょう。「バラを手に」も一つに捉え、「バラを」の「を」、「てに」の「て」に変なアクセントがつかないようにしましょう。「を」から「てに」と音が上がる前に、「を」はしっかりと入れておきます。「て」がうかないようにしましょう。うかすと体から離れてしまいます。トレーニングとしては、意識的に入れていきます。

 

「しろい」の「し」と「てに」の「に」は、同じ音です。音がズレないようにしましょう。

 歌の技術としては低い音である「バラを」の部分は上のひびきでとり、高くなる「てに」の部分を下に入れると音の差が縮まり、線が動かしやすくなります。

 

 音を一つひとつに捉えず、なるべく1フレーズにシンプルに捉えてください。その方が体が動きやすくなると思います。スケールを大きく出そうとしたら、体を使わざるを得ません。感覚から体を使い、体を使ってみた感覚をまた感覚にフィードバックさせてください。

 

「バーラーをーてーにー」とすべてを音にする必要はありません。逆にフレーズ感が出ず、棒読みのようになってメリハリがなくなってしまいます。ことばで覚えていってください。

 

 

「きみは おどっていた」

(ソーー ソラソーミファ)

 

 近い音では、私たちの意識では音と音の間隔の差が縮まります。ここは、同じポジションでいえるようにします。一つひとつとらずに、「ダァ~」と1フレーズに捉えたなかにいっていく程度でよいのです。その意識を高いところへも応用していきましょう。

「おどっていた」をきちんとことばで処理しないと「いたぁ<」となってしまりがなくなってしまいます。

 

 

「あまい」(ミー)

 

 声から音へもっていくときに、ささやくように「あまい」と雰囲気からつくってしまうと上すべりになってしまいます。しっかりと芯を捉えていえるようにしてから、技術の支えの上で感覚的に意味を伝えようとすることです。

 

 

 

 日本人が思っているほど、彼らは表現をつくろうとか、ことばをはっきりといおうとはしていません。音の流れのなかで声を発してみて、しぜんに消化できればよいのです。その分、体があり声があるからです。しかし、そうではない日本人が同じことをやろうとしたときは、意識して体を使わないと流れてしまいますので、気をつけてください。

 

 今、しぜんに声になるところがあるはずです。それを高い音域でも低い音域のところでも使えるようにしていくのです。そのためのトレーニングの声をつくるというと、どちらかといえば声楽のようにトレーニングがかった声になるし、体を使いすぎてしまう部分がありますが、そこまでつくっておいた上で、ポピュラーの場合はトータルに捉え、より心地よく聞かせるための配分を考えていってください。

 

レーニングのときは、多少、トレーニングがかった声でも構いません。体が使えていることの方が大切です。できることとできないことがわかること、できていることとできていないことの確認をすることです。

 

 

 いらしたばかりの人にとっては、今日の課題は難しいと思います。できなくてもよいのです。また、日本の曲をよく聞き、日本の歌を歌ってきた人では、今日の課題の音程、音感が理解できないと思います。共にわかっていないことがわかればよいでしょう。

 

 今日の課題は1オクターブ半くらいです。高音域になっても細くならず、ひびきを頼らないようにします。中途半端なひびきほど、使えないものはありません。

そんなに歌っておらず、声量もないのに歌の構成、フレーズがあり、シャウトしていないのにシャウトに聞こえる展開の仕方も学んでください。これが余計なものをすべて取り去った歌の原型です。

 

音感で耳で聞いた通り体によみこんでいって、自分の体で出す。それを繰り返してください。音の感覚、動き、ポジショニングをイメージで少しでも大きく捉えてください。体に入らなければ、同じ表現は出すことができません。イメージで聞くのは至難の技です。

 

 集中して耳で聞く部分、自分が表現を出す部分、最後までを1回でよみこめる力をつけることです。聞いてそれらしくまねるのではなく、表現として成り立たせてください。そのヒントとして、一人のヴォーカリストが出した表現を材料にして学んで欲しいと思います。

 

 見本との差をわかり、音程、リズムをとろうとしないことです。それをとろうとした時点で、学び方として間違えてしまいます。歌い手は伝えようとしています。伝えている部分を学ぶのです。それは自分にとって何なのか、そして自分が伝えている部分は何なのか、レッスンのなかで、新しく解釈し、組み立てて自分のなかから出してください。それをやらなければ、自分のためのレッスンにはなりません。

 

 海外へいったら、「あなたが思うとおりに歌ってみなさい」と言われます。

なぜなら、思う通りに歌いたいがために、誰でもレッスンをしているからです。

 

このことは、あたりまえの話です。今のみなさんは、耳や心にガードがかかり、皮膚が厚い状態です。とても歌える状態ではありません。早くこの状態から抜けてください。

どうして、歌ってみなさいといわれてためらうのでしょう。

 

 

 単純にいえば、1年目は「あまい」や「とおいラララ」一言がそろえばよいです。これだけのことでも相当、難しいのです。何回も繰り返すことです。体の準備ができ、感覚をつかみ、心が動いて声を出す。つくらず、しぜんにしていくことです。どんなことばがきても、同じポジションで捉えられるようにしましょう。

 

 ピアフやアダモを体によみこむのは、とても難しいことですが、間違えずに上達するために一番はやい方法です。一流のものをやった方がしぜんと体と声が必要とされるから、しぜんと身についていくのです。

 

 この1オクターブ半くらいの課題で、フィードバックして、表現が宿っているのかいないのかをチェックしていけば、いろいろとわかってくるでしょう。今は、その部分で粘ってください。

 

 曲の進行、仕上げ、ヴォイストレーニングに、このような形から入るのがどうしてか、まだわからないと思いますが、プロの条件のそなわったものが一つの作品として通用しているということは、そこに人間が心を動かされる共通の要素があると思えばよいです。

 

相当、体も強いし息も深いです。それだけの体と息を必要とする人に身につくのです。その条件を見習うことです。どう音をおいていくかということと、無駄なところは歌わないという主旨で徹底してやっていくと、もう少し煮つまってくると思います。

 

何か一つは身につけなくてはいけません。どういう形をとるにしろ、もっているものを出せるレベルになってはじめて、ここを本当の意味で卒業できるのです。

 

 

「こいを しらないまま トワ」

(レーー レーーシ♭レミ ファー)

 

 曲の初めからやらずに、中間音から高音に入る展開のところから入るとやりやすいでしょう。しかし、声は出しやすくても、一本調子になりやすいところでもあるので、上昇感をもって次の「ゆめもとめて」でおとしてください。ここは、サビに入るフレーズの基本的なトレーニングです。

 

「しらないまま」の「~まま」で音を伸ばして大きく盛り上げようと思ったら、前の「しらないまま」までをどういうふうにおいたらよいのか考えてください。いきなり最後の「ま」でクレッシェンドしてもサビに入ることはできません。

「こいをしらないまま」まで全部いい切ればよいですが、いえないときは「こいを」で入れて「しらない」を少しおとして「まま」をクレッシェンドしていくなど、勢いを考えてみてください。

 

 

「あまい かおりに」

 

 フランス語は「あまい」を「ダン」といえばよいのですが、日本語は難しいです。しかし、「ダンゃという感覚で「あまい」を一つに捉えてやればよいのです。「しろい」も同じです。「かおり」の「り」が難しいです。そらすのでなく一つに押さえてください。

 

 

「きみはつつまれて」

 

 アクセントをどこにつけても構いませんが、「きみは」の「き」につけ、一つに「きみは」といい切るのが基本だと思います。

「つつまれて」の「つつ」の後に「う」を入れて一つおいていきます。そして「て」で「て<<<」とねばります。声量を大きくするのでなく、息を通じ感情を表現するのがコツです。

 

「きみはつつまれて」で次のところへ勢いをつくります。前の「あまい かおりに」のところはモティベートが違ってくることを感じてください。

 

 このアダモの曲は明るい曲で、はまっていければ歌いやすいし、覚えやすい曲だと思います。1拍目と3拍目で聞いて、次に2分の2拍子の感覚で3連を読み込んでいくことです。ことばがあうところがあります。

 もりあがりは1拍目になっていますが、はるのではなくソフトに出します。高い音をソフトに出すのはたいへん難しいですが、より深く体を使ってその音をとめます。とめてそこで掃くうな感じでやってください。

 

 アダモは、森進一さんと一緒で、声量、声のよさより、音のおき方によって盛り上げていく技術があります。

 

「きみはつつまれて」の「て」のおき方、「こいをしらない」の「こ」と「を」と「しら」。この微妙な入り方や音のセンスもよく聞いてみてください。

 

 曲のなかで音の飛躍が1オクターブもありますが、高い音をきちんととっていなさそうで音はとれています。そのわけは、1オクターブが体に入っているから柔らかくおいていけるためです。

 今は同じレベルで歌えなくてもよいのです。大曲でトレーニングすることで学べることはたくさんあります。離すところ、にぎるところの配分など学んでみてください。

 

 高い音は、中間音や低音におきかえてトレーニングしてください。

 平面的だ、メリハリがないとよくいっていますが、こういう曲にこそ如実に表われてしまいます。ヴォーカルのなかにリズムを入れていくのです。音感的なものをきちんと処理してください。音色を優先し、いったんことばを捨て、流れをつくりましょう。最終的にはことばの意味が感覚に聞こえるようにします。

 

 日本語のはめ方も、一つズラすだけでかなり違ってきます。どれが正しいというより、その人が全体を構成していくなかできまっていくことなので、いろいろ工夫してみてください。

 

 人間の生理的な一つの呼吸からいうと、このくらいの曲で徹底的に勉強するのがよいと思います。少しずつ呼吸がプロの大きさをもちます。今の音楽は速すぎるので、トレーニングで基本を学ぶなら、このくらいの曲が向いています。体と心でしっかりと捉えてから、速くする分には構いません。詩、曲、コード感、歌とトータル的に学ぶことのバランスがとれていると思います。

 

 1回の踏み込みさえしっかりできると、そこから課題がたくさん生じると思います。どこかのことばでひっかかってしまったりするでしょう。しかし、こういう部分がその人の声のなかでの真実のところなのです。それが歌になって消えてしまうのが問題です。そうならないために、ミルバやピアフを材料に使っているのです。なぜなら、彼女たちの叫びのところから歌に入ってくるところは、フレーズとしてそのままほとんど変わらないからです。

 

 

 本質を見極めることです。スポーツ選手の手先ばかりみていても同じことができないのと同じです。手先には力を入れていなくて、むしろ腰や重心に気を配っていて、その部分を見抜けないと、同じ土俵にのることができないのです。ピアフには、天才的な音のおき方が結果としてありますが、本人は、そうしようと思って計算して歌ってはいません。もっと単純に捉えているはずです。

 

ピアフがたとえ、音をはずしたり、リズムをくるわせても、何を歌ってもピアフはピアフ、すごい歌だと思わせてしまう理由を知ることです。音程やリズムの問題ではなく表現のなかでの問題なのです。表現のヴォリューム感や捉え方をクリアしていかないと、深い声をつくる意味がありません。

 

 しかし、最初は自分の意志で表現していってください。自分の体がそういう状態にならなければ、歌は出てきません。心や体の状態が動かない限り、人には何も伝わらないということを最初に考えてください。曲を聞いたときに、心と体で受け止めて、1曲のうち1フレーズでも同じ次元でできるように集中してみてください。そして、レッスンで何回もまわしていくうちに調整できるようにがんばってください。そのうち神が助けてくれます。その声に耳を傾けてください。

 

 これからも材料は同じ曲を何回かはさんでいきます。課題が何も出てこないという人はいないはずです。一年前やった曲なら、比べやすいはずです。大曲を何回も聴き、やってみることでバックグラウンドとなる力がつきます。イタリアやフランスの曲を使うのは、その方が意味がわからない分、却ってフレーズ、流れ、声のひびきに集中しやすいからです。

 

 

 

 

「愛は君のように」③④

 

 

「じっと きみを みてるだけなんだ」

(ド#ーー ファ#ド#ド# ド#ーラド#ミレ#ド#シ)

 

 この部分はおもしろいところです。流れをとった上で、声、音色、間をどうとっていくかが問われます。リズムからはずれても許されるでしょう。

 強アクセントをつけるとしたら、「きみを」の「き」につけ、「みてる」で入れるとよいでしょう。

 

「じっと」で間がもたなければ「じいっと」と「い」を加える場合もありますが、全部につけていくとしつこくなるので、どの部分を自分は強調したいのかを知ることです。

「なんだ」では、何かをにおわせないと、サビ、間奏にいけません。ここは音楽的なところです。フェルマータ気味です。

 

 

「てを さしのべた ぼくの あいは」

(シーーーミシシ シーソ# シレ#ド#)

 

「じっときみを~」の前のところです。「てをさしのべた~」から「じっときみを~」まで同じような感じできていますので、3つを同じようにとってもよいし、変えてもよいと思います。仲間がずれてから強調されますので、音楽的にうまくのれば、日本語もうまくつきますが、のれないとはずれていってしまいます。

 

 高音域をいかに体で押さえるかという意味では、よいトレーニングになると思います。

 

「てをさしのべた~」で止まりすぎです。早く先にいかないと「みてるだけなんだ」へもっていけません。「じっときみを~」のあとから体をゆっくり使っていきます。

「みてるだけなんだ」の「だけなんだ」は余韻でやっていきます。表現はこの前のところで終わらないといけません。

「ぼくのあいは」の「い」の押さえが弱いです。離さざるを得なくなったら、ことばで処理してください。

 

 

「トワ」

(ミー)

 

 あまくなりすぎるとトレーニングになりませんが、はりすぎず、少しずらしてみてください。楽譜上はスラーやタイが多いですが、自分はどこで切りたいのか、気持ちを考えて構成をねってください。いろいろな解釈があってよいです。しかし、体から離さないようにしましょう。

 

自分はどこで入れて、どこで離すのか考え、お客を飽きさせないようにしてください。歌がこのまま平凡に終わってしまわないように、中間音でどう盛り上げて、高音でどう処理するのか、フレージングを学んでください。スタンダードでわかりやすい構成です。強弱で進行していくよい見本です。

 

 サビは音の高さに関係なく、とても大きいフレーズになっています。その大きさがサビだと感じさせるのです。そこがテーマです。その前のところまでは、ことばでもっていっています。

 

 カンツォーネのように、ひびかせたり,声を朗々と出しているわけではありませんが、体で一つに声をにぎっていて、大きさをゆったりととっている意識の部分が共通しています。急いではいけませんが、だらだらしてもしまりがなくなってしまいます。意識はたっぷり、曲のなかではテンポを遅らせないという感覚でやりましょう。

 

 日本語は突き放しづらく、処理が難しいのですが、そういいたいという気持ち、表現をもっていれば、きっと表われるはずです。そういう気持ち、気概が大切です。感情を出そうと思ったら、息と体を使わなければならなくなるはずです。

 

 

 

ーー

 

課題曲レッスン  「夜は恋人」

 

 

「よるはすてき いとしいときを いついつのひまでも」

 

 ことばだけで読んでみます。なるべく大きく入り、かえてやらないようにします。「よるはすてき」だけでも最大限だせる音量でいってください。

 ひらがなの音数を減らす感じで、フレーズ一つで捉えます。息と体を一致させたところに声を捉えていきます。「よ・る・は・す・て・き」とならないように「よるはすてき」ととります。

 

 情熱をこめるのはよいのですが、先にことばの方を読んでしまっていて、そこから計算してはだめです。感情を音声の展開だけで捉える感じです。管楽器がパオッとなり、それをどう動かすかというようなイメージで捉えてください。

 

そのときの踏み込みが一つになれば、今よりも深い声でとっていけるはずです。朗読、映画、俳優の世界が90分でやることをヴォーカリストは3分に凝縮しなければなりません。もっとも凝縮する集中力が必要です。

 

 

「さびしくない」

 

 この前に「はい」を入れて、「はい」のなかに「さびしくない」を入れてしまいましょう。「はい」と「ない」を統一させて、「さぁーくない」くらいに捉えます。

 ことばでよんでいるところまでは、多くの人はそこから真実が出てくるのです。ことばを読む課題で、のどに負担をかけず、コントロールできるようにすることです。

 

それをクリアして行けば、役者あるいは外国人並みの感覚でとれるようになるのです。それを確実に捉えないうちに、音楽表現や歌の方に走ってしまうから間違った方向にいってしまうのです。いろいろなことを知るのは悪いことではありませんが、まず、今やるべきことを3分できるようにしていってください。

 

 

「よるはすてき いとしいときを」

 

4つで捉えるのではなく、これで一つと捉えます。そういう捉え方でいけば、線が出てきて、そのなかでことばを配分していけるので、ことばそのものがもう少し自由に動いてくるはずです。声が宿ってこないとわかりづらいとは思いますが、1声、1フレーズなら誰でも宿っているときがあるのです。そのときの感覚をつかんでいければわかるはずです。

 

 大きい声で「よるは~といっているうちに、感情が入り一体となってきます。そのうち体が自由になり離れていく感覚を、プロセスのなかで踏んでいくようにしてください。歌のなかでこのプロセスを踏むのは難しいので、1フレーズをことばと歌で踏むことを繰り返していくのです。

 

浮いている歌のことばに一度、きちんと根をつけるのです。とにかく1曲より1フレーズを何度も繰り返し煮つめていってください。中途半端に歌ってわからなくなるより、合理的なトレーニングです。

 

 伴奏-バックに流れているオーケストラの音も、音を厚くしたり薄くしたりして伝えようとしているのです。そのような部分も含め、トータルで学んでください。

 

 歌のなかで技巧、計算していかずに体を楽器と考え一つに捉え、どこを中心に動かし、どこに感情を読み込んでいて、それがどう体の動き方に出るのか煮つめていってください。そのために全身を感覚にしてお手本を聴きます。

 

 ピアフの歌い方は「たての感覚」です。踏み込みと離すことをどうするのかというところでしか歌っていないはずです。離すことと、故意的に音を小さくすることとは違います。飾りがみえたり、計算がみえてはいけません。

 

「よるは」と大きくして「すてき」と小さくしても、大きな線が消えてしまいます。息を大きく吐いたら、次に小さくならざるをえないし、大きく表現したらその反動で柔らかくなるものです。インパクトとクッションを声に感じることです。その感覚を、もっとダイナミックに捉えていってください。

 

 

 

ーー

課題曲レッスン  「この愛に生きて」「タンゴ・イタリアーノ」ミルバ    350304 

 

 

 

 

.「きみといきる A canto ate A canto ate」

(ド#レ#ミファ#ド#レ#ーミド#ーファ# ファ#ーソ)

 

 ミルバは、比較的楽譜に忠実で、浮かしたりせず、体から声の芯を捉えた歌い方で展開するので、トレーニングの材料や見本とするのには最適です。

 日本語、イタリア語どちらでトレーニングしてもよいです。日本語の方は、ことばが難しいので、イタリア語の方がやりやすいかもしれません。

 このような、オーソドックスなものから歌になるための意識的な時間、空間、フレーズを感じとってください。

 

 「アテ」の「テ」の動かし方にフレーズをつけます。最初から最後まで同じ音量で音を伸ばしても、棒のようになるだけで表情がつきません。「テ」の初めを少し一回、弱くしてから「テ<」とだんだん強くします。「テ」は上にぬかず、「テ<<<<>」と、4回くらい体に入れていきます。そうでないと、次でおとすことができません。

 

 

 

「このあい いまこそ」

(シシシシ ラソ#ファ#ミ)

 

 この部分は、ことばから入るので、非常に難しいです。前の課題の「A canto ate」に続けてトレーニングすると、盛り上げたあとに入るので、ためられてやりやすいと思います。ためること、これも大きな課題です。あまり音を弱くすると考えると、芯がなくなり浮きすぎてしまうので気をつけましょう。

 

 

「タンゴ・イタリアーノ」

 

「かぜよ はこんでおくれ あのひの ゆめを」

(ソソソ ソソファソソファソ ソファソファ ソファレ)

 

「かぜよ」は、きちんと入れます。ビギンのリズムを意識して、だらだらと流れないようにしましょう。みなさんには、リズムがはやく聞こえるかもしれませんが、ヴォーカリストにとっては、もっとゆったりとした感覚で歌っています。体にリズムが入っていないから急ぐのです。おとしこんで入っていますが、そうすると難しいので、つめこむような感じにします。

 

「ひかりみちてあかるい まちかど」

(ソソソソファ#ファnミミ♭レレ ソレレレ)

 

 たての線と横の線のバランスを考えてください。「みちて」の「みち」、「まちかど」の「ま」などがたての線のポイントですが、たてばかり強いと流れなくなってしまいます。

「みちてあかるい」の半音ずつ下がるところの音程感覚を養ってください。苦手な人が多いので、この部分だけを何度もトレーニングすると力がつくでしょう。

 

 

「ウン タァンゴ イタリアーノ ウン」

(レー ソーミーファ#レドドレレ ミー)

「ドルチェ タァーンゴ」

(ファ#ーラー ミ(ファ#ミ)レレ)

 

「dolce」=あまいとは、こういうイメージです。

 芯をつかんでおいて、その部分で動かしていきます。失敗してもよいのです。動かそうとする意志をもち、呼吸、色づけなど、何かを歌にこめることです。

 情感がある部分です。ことばのくずし方、ことばの流れなどを学んでください。「イタリアーノ」の「タ」や「ドルチェ」を乱暴に扱わないようにしましょう。

 

 音程がみえないような音楽的感覚、大きなフレーズを感じとってください。

 タンゴ、ビギンなどのリズムは、なかなか日本人の体の中に入らないリズムですが、全部だらだらと流してしまうと、しまりのない音楽になってしまいます。踏み込むべきところは踏み込んで、そのあとにあがってきた声をどう扱うかが大切です。このような材料を与えられたとき、その材料がもともともっている音楽のリズム、フレーズに、自分のフレーズを練り込むことを学んでいってください。