一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

ステージ実習コメント  7800字 564

ステージ実習コメント     564

 

ライブ実習コメント ③    360200

ライブ実習コメント  ②          360318         564

ライブ実習コメント    ④           360318

 

 

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ライブ実習コメント ③    360200

 

 毎回、同じところで聞いていると、純粋な観客としてではなく、基準を設けてコメントしなければと思います。最近は、私が来たいときに来てみる方が、BV座を切り離して厳しくみることができるのではないかと思っています。

 

 本日のよかったところは、勢いがみえたところです。2年間は役者のレベルまでいけるとよいと思っています。音楽的なことにいくまえの段階としての表現の価値、つまり、ことば、パワー、インパクト、勢いを出すことです。

 

 頭でっかちになりすぎていて音楽的な消化ができていなかったところは,反省点です。役者みたいに表現することと、音楽的に歌にもっていくことの両立は難しいですが、それをカバーする技術であればこそ、トレーニングの意味があります。しぜんにみえることを求めたいものです。

 

 それから、マイクを使うことで自分をよりよくみせることができる、マイクを味方にすることが本当なのに、そのマイクに踊らされてはなりません。マイクの使い方が悪いとか、慣れていないという問題よりも、マイクがなくて歌えているところの部分にマイクを使えていないということです。歌のレベルのことです。そうでなければ、マイクを使うのがまだ早いのです。

 

 ヴォーカリストのベースは、まぎれもなく声の技術があるということです。この本道のベースから、方向がズレてはなりません。一流とよばれるアーティストには声の技術があり、声のベースがあるということが本当にわかっているのでしょうか。本当の意味で、その技術をコントロールして芸を成り立たせているものを「わかる」ことが大切です。

 

その次の段階で、それがわかった上で、その技術を必要としないのであれば、それは構いません。ヴォーカリストとして向かないでしょうが、何か他のところで活躍できるかもしれません。しかし、そのベースを求めにくるのがこの場なのです。ここが提供できることにこだわってください。

 

 歌の大きさ、音楽の大きさをわかっている人は少ないものです。見本のベースの部分を感じ学ぶことができず、いつまでも飾りの部分だけをまねてこなそうとしていたら、技術にはならないしベースにもなりません。大切なのは、ベースがあって自分の歌にできる、つくっていけるということです。そして、結局は、声量があろうがなかろうが、その人のオリジナルな表現(フレージング、節)をもてればよいのです。これを技術で支えて出していくのです。

 

 今の自分のレベルがどこでも構いません。一流がどのくらい大きなスケールで、どのくらいそれがすごいことなのかがわかって、それを自分との差を感じるところから、自分の位置づけができることが、正しく学べるための本道です。何回も一流をみて、体にしみこませ、叩き込んでください。そうでないと、大したものは何も出てこないからです。自分だけの思い込みで形だけつくってしまい、勢いだけでいってはなりません。全体的に、体にベースが入っておらず、地に足がついていません。

 

 伝えることは最も大切ですが、伝えることを重視するあまり、早く作品をまとめてしまおうとしているようにみえます。それが技術に支えられていません。みなさんの器が今、10くらいだとしたら、一流の作品に近づくことによって10を50、100の力になる可能性がみえるから近づけて欲しいのであって、10のところでまとめて欲しいわけではないのです。

(②クラスの方が10を15、20にしようと試みていたと思います)。

 

一流の大きさが今、できなくても、いつかみえなければ永遠にそうはなれないのです。その大きさを感じる必要があります。トレーニングはイメージあってのトレーニングですから、イメージできるようなトレーニングをしてください。

 勢いは必要です。しかし、それは音楽的に捉えられた勢いをさしています。マイクがなくてもひびいてくるような声を技術の上に必要なのです。

 

 伝えるためには音楽も「ねばり」が必要です。半オクターブくらいの曲をじっくりよみこんで、音楽の1フレーズを、ことばの一言のようにみつめ、指先から髪の先まで全身で感じとってください。もっと奥深く、繊細なのです。レッスンでの短いフレーズや、発声のときの「ハイ、ラオ、ララ」も、機械的にやるのでなく音楽的にやってください。これを踏まえて歌に型を生かしてください。

 

 前回は、もっと鋭く、インパクトとパワーをといいました。もしそのことが今回の形になったのなら、歌の技術にのった歌を歌って欲しいというべきでしょう。

今日のものをもっと大きい声で勢いをつければ歌になるということではありません。方向が違います。ひいたり浮かしたりするためには、より押さなければいけないのです。

 

しかし音楽は、すべてを押していくというのはありえません。流れをつくり、それにうまくのることです。自分のつくった流れと戯れてください。スケールのとり方をきちんと踏まえ、歌の技術を身につけて歌に結びつけていってください。トレーニングの上で差がつくところは、トレーニングの必要性があるベースの部分なのです。

 

 

ライブ実習コメント  ②          360318         564

 

個人のレベルの実力の差より、評価眼の差がついてきます。

 今日のできは、私の評価以前の問題です。よいところをみつけようとみてはいましたが、全く基本に基づいていないと感じました。今からごまかして、どうするのでしょう。ステージ、人前だというのはわからなくもありませんが、基本がないものに飾りをつけて出しても、何の意味がありません。

 

 もし、5、6点のものが10点になることが完成だと思っているのなら、ここの研究所でやっている、声をつくる、体をつくる、息を吐くということは、邪魔なことにしかなりません。うまくなっていくことができません。

 

 何が力で何が飾りかの区別がついていません。めざしている方向自体が、基準からそれている気がします。完成形のイメージが貧困だと、その程度の歌しかつくることができません。1、2年でその低い完成形に近づいたとしても、誰の心も全く動かされないでしょう。

 

今日の60分は、時間の単位そのままの60分でした。時が伸びたり縮んだり、止まったり破れたりする感覚が全くないのです。

 

 はじめの「タクシー」というところだけでもそうだったでしょう。7、8割の表現ができていたのが2人いたかどうかという程度です。表現しようとしてできなかったのならよいのです。もともと意図していなければ、できるわけがありません。

 

「友情が残るはず」まで全然、盛り上げてないし、そんな感覚も感じられないのです。

「I love you tonight」のフレーズの大きさをどのくらい読んできたのでしょうか。そのフレーズの大きさ、節のつくり方を普通に話をするくらい、少し歌うくらいという程度に捉えている限り、カラオケやのど自慢の枠からは出られないでしょう。

 

 日本のヴォーカリストを見本にしていくこと自体は、決して悪いことではありません。「アーティスト」として活躍できている人たちは、実績があるということで、評価すればよいのです。彼らから学ぶことは多くあるでしょう。

しかし、まねをするところを間違っています。声のない分、それを補うリズム感、ことばの処理、音感、体の使い方を学ぶべきなのに、そういう部分を無視してしまっています。

 

 この研究所で学んで欲しいのは、体のなかに声を入れること、体そのものを強くすること、たった一言、1フレーズに執念をもってこだわること、体から声、ことばを捉えることです。うまく歌えているかどうかというよりも、余計なものがそぎ落とされているかどうかです。

 

そぎ落とされていれば、そんなに上手には聞こえないかもしれません。しかし、そうすることによって、その人間の本質がみえ、その人間がどう歌いたいのかがみえるのです。その人間の意図-歌う理由が感じられるのです。それで充分です。

 

 今の時点での小さく完成させることは全く考えないでください。いつまでも完成させて欲しくありません。歌の感覚がどう宿っているのかをみることです。技術は高めていくと同時に、技術が使えるところの感覚を養っていってください。声、体なら、今宿っている技術を少しずつ出してください。自分でやってきたことを、集約、凝縮してこの場で吐き出してください。

 

 世の中で飾りだけで通用しているようにみえている人でも、その下には本体があるのです。飾りは本体の上にのっているものです。その根を捉えていないと、感情がのっていたり、伝えている気になっていても、何も伝わりません。本質を見失わないでください。

 

 本質を見抜く判断は難しいですが、その判断力を養うために、本物を聞いて耳を養って欲しいものです。ここでは材料を提供しています。本物には、インパクト、パワーがあります。つくりあげていく段階では、この2つは必要不可欠です。今の段階のプロセスで、この2つがなければ、たいしたものをつくりあげることはできません。今は、なるべく大きくつくること、大きくイメージをもってやるようにしてください。

 

 芸事、一流のプロの世界というものは、普通の人間にわからない感覚の世界です。それを、自分の感覚でよみこんでいくことをやってください。

 声は、人によってよい、悪いといえませんが、その人の本質な部分まで掘り下げたところから出てきたものであることが、重要です。そうでないと、そこに技術がみえてきません。勘違いのままいかないようにすることです。

 

なぜレッスンの場、ステージの場があるのか、歌だけで伝えようとするためにどうしたらよいのか考えてください。歌、声が聞こえるのでなく、その人間の「熱さ」が聞きたいのです。しかし、それをコントロールする最低限の技術をもつことが必要だから、声をやるというだけです。

 

 選曲について、考える必要があります。よい選曲なのに、カラオケのように聞こえてしまう理由を考えてください。最初の4フレーズでプロと自分の差を把握してください。うまくなっているという錯覚を起こさないようにしてください。

 

「のらない」とはどういうことなのか、何でつまらないものなのかという判断を、歌そのもののなかから、きちんと捉え直してください。歌は「流す」のではなく「とめる」ものです。一流は、時間も空間もとめています。とめるエネルギーは相当、大きいものです。みなさんの「熱い」エネルギーがたまること、そして吹き出すことを期待します。

 

 

 

 

ライブ実習コメント    ④           360318

 

今まで④のクラスは、BV座ワークショップで自由曲2曲という形でやっていましたが、課題曲を1曲、入れることにしました。自由曲よりも、課題曲がうまくこなせていたからです。自由曲は、選曲、表現のピンとがずれている人がいました。このようなことから考えてみても、課題曲を入れていく方がより学べると思ったからです。特にお互いに比較しやすいからです。

 

 BV座という形で1年やってきましたが、同じメンバーであるせいか、マンネリ化して、悪い意味でやりやすくなり、よい面がでてきていません。

③クラスの人がここらで④クラスに入ってきたこともあり、ここらで一度、④クラスもフィードバックして足もとをみつめなおしてみるつもりです。昔と同じように、1ヵ月に1回ステージ実習、3ヵ月に1回ライブ実習という形にして、BV座はクラスに関係なく、別のところにおきます。これは、あくまでも「試み」ですが、何かみなさんに気づいてもらうためだと思ってください。同じというのは、あまりにも芸がありません。一つの刺激になればと思います。

 

 この研究所を卒業するときには、ここを一つのレベルとして意識において各々、発展して欲しいものです。何らかの形でここに関わった人が、どこかで活動をしているときに、この研究所のレベル以上のことをやっていたら、外も内もありません。

卒業していくときに、逃げにならないようにしてください。修めることを誰よりもたくさんして、他の人にも大きな価値を与えていくようにしてください。

そしたらどこでもできます。この研究所にいるからといって安心されても困ります。外に出た人に差がつけられるようでは、何のためにここがあるのかわかりません。

メジャーでやっていく人は広くやっていけばよいのですが、マイナーでやるなら、深くやっていかなくてはだめです。狭く浅くならないようにしてください。

 

 BV座に関しては、よい歌を歌ってくれた人はBV座に出続けてもらい、よくなかったときは、おりて勉強し直してもらうというようなスタンスでいくつもりです。私が他の人に聞かせたいと思うくらいになってくれたら幸せです。

 

 実際、この研究所には、才能がある人が残っていると思います。まだみえなくとも、どこかに何らかの才能の持ち主がいることでしょう。少なくとも、ここにいる全員は、私より才能があります。だから、私の半分の努力をすれば私を越えるでしょう。その気概でがんばってください。

あとは、パワー、攻め続ける力、判断力、気をひきしめ、学び続けることです。気持ちを維持すること、学び続けることは思った以上に難しいようです。

 

 今日は、パワーが外に出ていたと思います。歌はそれでよいのです。この前までは、つめが甘かったように思います。つめるところは2割くらいですが、その部分に8割集中しないと難しいのです。つめることに頭を使うより、パワーを出していった方が簡単です。みんなの存在そのものをシャウトし続ければ、誰でも1、2曲は関心をもって聞くものです。

 

 声の器のなかに、ようやくリズム、音感が入りそうな大きさが出てきました。ここに入れていくようにしてください。これからは、声を出すことは一つの快感だというところに結びつけて、心地よさを味わう期間としてみてもらえば、音楽が宿ってきます。

 

 また、心の部分において、伝えるものをようやくもちはじめたようにみえました。これがあれば、技術がなくても通用します。1.声の器 2.声を出して音楽を宿す 3.心を伝える この3つの条件を整えることです。それとともに、リピート性を加えることです。同じことを同じようにみせて何回も耐え得るものにする、お客さんが何度も聞きたいと思うようにする、その部分を問うてください。すると、空間、時間の捉え方が変わってくるでしょう。

 

 危機感、表現へのハングリーさは常に持ち続けてください。同じメンバーだからこそ、マンネリ化しないでください。人はどうでもよい。まわりと競争しても仕方ないのです。上をみてめざしていなければ成長することはできません。一人勝ちしてください。

 

一人ひとりがそのつもりで取り組み、他の人の一人勝ちを許さぬようになればよい世界になります。同じことを深めるなかで、繰り返し同じことを自分で求めていってください。

 

今やっと、スタートラインにたったのです。今からまた2年、初心に戻って学んでください。まわりの人がこの人を世に出さなければどうするのだと動き出さざるを得ない状況にまで、まわりを巻き込んでいってください。それだけの価値、芸、感動の連続を起こしてください。

 

 正しいものは、時代が要請するのであって、私が正しいわけではありません。私よりみなさんの方が正しいし、これからの世代の人が出したものが、正しくなるのです。だから、私は変わらぬものを伝えているつもりです。それを学び、それに対して自分で練っていかないと、年齢とともにもたなくなってきます。

正しいものを見極める判断力をもつとともに、次の世代に負けないパワーをキープし続けてください。安易に世の中に迎合さず叫び続け、歌い続けてください。自分が歌う理由をあたりまえとしてつけていってください。

 

 

 日本のライブハウスは、相変わらず感動できることをやっていません。それよりまともになることは最低限のこととして、この研究所はやっていきたいものです。

 この研究所の利点は、完成という形をとらず器を大きくしていける場だということです。

 

歌っているなかで体が強くなり、より息が吐けて、また歌へとフィードバックしていけるのが理想です。20年、30年とミュージカルなどをやってきている現役の歌手は、この場にきたら確かにみなさんよりうまく聞かせられる何かをもっているでしょう。

 

しかし、多くの人は今以上、器を大きくしようとはしていません。他の人に差をつけられるところは、声そのもの、声の技術とその声を展開させられることです。あるいはアーティストとしての思想、色気、ヴォーカリストとして特化した声の技術でみせていく人もいるでしょう。

 

絶対的に強いものを一つもつこと、もう一度、器を大きくすること、歌からフィードバックすることを確認してみてください。

 

 この研究所を、深いところでわかる人がきてくれるように、プロがここにきて学べるような場にしたいものです。これは私たちがもっと学ぶためにです。BV座を公開し、BV座にいる人のように確かなものをもってやりたいから、ここに入門するということになることです。私の本にも、ここは日本の良心、世界に通じる一つの基準があると書いています。BV座を嘘つきにしないでください。

 

 魅力的な人が魅力的な芸をしていればよいだけの話です。技術が宿れば宿るほど、それに見合うだけの気力の大きさが必要です。

 音楽が息づいてきたら、ことばを止めればよいのです。そうすれば歌になります。本来は音楽が流れていたら、体のなかでことばは止まるものです(体が声についてきている人には、その感覚はわかるはずです)。

 

 世の中に出ていく方法は、喧嘩をしていくか示談談合のどちらかです。万国に共通するのは喧嘩の方です。喧嘩をするのにスキがあると命とりになります。スポーツなどはスキがあったら徹底的にやられてしまいます。そういう意味では、今日のみなさんの一挙一動は、まだまだスキだらけでした。すでにこの場にきたときからステージは始まっているのです。シンプルなものをシンプルに出し、研ぎ澄ますようにしてください。野性の感覚をよみがえらせてください。

 

 歌一曲、通して、たとえまとまっていなくても、一つ何かみせてもらえば観客は満足するのです。伝えよう、みせようという気概が大切です。

 今後のより一層のパワーアップを望みます。新しい日本のジャンルをつくるくらいの気持ちでがんばってください。

 

 そのうち機がみちたらBV座を打ちたいと思います。今日のできを最低のラインとして、月6曲、レパートリーを考えてください。毎週、ステージに立つつもりで曲をそろえるようにしてください。

客にこびたり、曲1曲を聞かせようという意識が出ると、難しくなります。

 

歌を3分歌うというより、3分を一つに捉えて一つを出すという感覚で出す、その一つを出すのにものすごいパワーがいるということです。課題は簡単にはなくならないはずです。がんばってください。