レクチャー
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ヴィジョン レクチャー 「取りくみ」 360106
レクチャー オリエンテーション 360300
Q&A (福島とトレーナーの回答) 360511
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ヴィジョン レクチャー 「取りくみ」 360106
常に念頭におくことは、「初心に戻り基本をやる」ことです。
ライブは経験という意味で勉強になるし、その場から学ぶことも多いと思います。しかし、レッスンとは分けてください。
ライブがレッスンにひびかなければよいのです。しかし、ライブくらいでひびくのもおかしなことです。利用できるものがあれば何でもやってみればよいと思っています。ただ、ここの指針は変わりませんし、中途半端にやっても誤解が生じるので、徹底して、声の表現技術を中心にしていきます。
いらっしゃる人の枠が広がり、ヴォーカリストだけでなく声を使っていく人、声優や役者も多くなってきました。一所懸命やっている人、プロに特化できるエネルギーをもっている人たちと一緒にやっていきたいので、ジャンルは問いません。ただ、ここは声だけでなく声のためにも音楽的要素をもって獲得していくように考えています。
今の状態をもっと特化して、ハイレベルになるような形で少人数精鋭化、そして5年、10年単位で考えていける人をまとめて、出口をつけられればと思っています。
いらっしゃる段階で、何年みていけるか、どの段階までいきたいのかなど、必要とされる要素により何パターンかに分けていくのもよいでしょう。選別してもらうようになると思います。
昔は、歌い手がいて歌が勉強できるような小屋がたくさんありました。そのような役割が果たせればよいと思います。その場にいる人がたった一人でもその場のかじをとれるようになれれば、いろいろなことができると思います。力をつけてください。
皆さんの生活の中心がどこにあってもよいのです。ここになくてもよし、ここを出ていってもよし。がんばっていて生きていればよいのです。力さえあればどこででもできます。できないのは力がない。それ以外の理由はありません。そのためには、2年で課題を新たにして、器を壊すということを3回繰り返して、6年が目安といったところでしょうか。
2年たつと、私がここから追い出すというような話がありますが、そうではなく、4年、6年いてくれても構いませんし、4割以上、継続しています。
ただ、ダラダラとぬるま湯につかって過ごさないことです。所属する条件は、前年以上の課題を自分に課し、気概をもってやっていることです。そうでないと、せっかくやる気で入った新しい人、入会したての人にまで悪い影響を与え、力なくして口数の多いだけの人になります。
結果的には、本人がそのつもりだけでアーティックな部分がなくなってしまいます。体に、心に宿らせていってください。そうでない人には早く去って、違う道で幸せになってくださいといっているだけです。
才能を問う努力をする才能のない人は、どこでもものになりません。でも才能には、いろんなものがあります。私自身も、前向きの努力をやめたところで、人前に立つ資格はないと思ってやっています。
芸事の学び方として、カリキュラムを組み、それに対し、こなしていく。あまり力んでやっていくとストレスがたまり、声を身につけるのによくありません。力を抜くということも大切です。早くそうしたいと焦っているうちはよくわからなくて、時間がたつうちに気づいたらできていたという感じになると思います。もちろん、毎日、日本一やっているという実績なくしては、無理でしょう。
どのくらい、ポジティブな気持ちをもって、ことにあたっているか、追い詰められているかだと思います。そういう極限の状態で、厳しい気持ちにさらされてやっていくことで、よりよく人間も自分の体や心も知り、それが歌の力になっていきます。表現しようなどとしなくても、自分に厳しいトレーニングの毎日からしぜんと歌に内容が宿っていくでしょう。ボロボロになるのを覚悟してやっていかないと、気分だけでは不安でつらくなってしまうと思います。
外から何かを吸収することも必要ですが、何かを与えてもらったり、どこかにあるものを探すというよりも、自分のなかにある、持って生まれたものを開発していくことです。このヴォイストレーニングもその理にのっとっています。
もう一度、ここでなぜ自分は歌いたいのか、どう歌いたいのかを考え、自分を見つめ直すことです。そして、自分を信じることです。自分を信じるには、他人よりもやるしかありません。やることが信じることのベースになります。これだけのことをやってきたということで、自分に納得させることができます。
うまくなるにつれて、まわりにはなまけた人がいなくなり、もっとやってきた人、知っている人、キャリアを重ねてきた人ばかりになってきます。そうなると、尚さらやってきたことからの自信がないと、苦しくなってくるでしょう。
世界でやるということは、そういうことです。ゆらぎない自信をつけるために、他人の何倍ものトレーニングをすることです。もちろん量でなく質においてです。楽しくないのは質のトレーニングになっていかないからです。レッスンほど楽しいものはありません。それは、たった一人で自分に向き合う時間です。
「枠を破る」ことが歌には必要です。少しだけ改造するのではなく、家ごと壊してしまうくらいの大きな転換が何度か必要です。固定の枠をはずし、子供の気持ちに戻り、もともとあるものをみつけて大切に手にとり確認しつつ、自分を解放しましょう。
同じところに何年もとどまり、同じ自分にこだわるだけでは、歌に悪影響を及ぼします。負けぐせがつきます。10のことを、1から一つずつ、2、3、4…と学ぼうとしているようですが、差はそんなところではないし、トレーニングもそんなものではないのです。
もっと大きなビジョン、芸風、人に学ぶことです。器の差、人間一人の力をもっと感じることです。まじめすぎて、一所懸命だけでは、そこにアーティックなものが育まれていかないような感じがします。
NOVAのCMの英会話のおじさんのようです。あのオジさんはよい人ですが、実在していても一流のアーティストにはなれないでしょう。そういう人は、大病、大失恋、大失業、大破産など、何か、死ぬギリギリの体験のような、鋭利なものに自分の感覚をさらされるようなことが必要かもしれません。
ある意味で「開き直る」ことが大切です。何でもどんどんやってみることです。世の中は、皆さんが思っているほど、皆さんを頼りにしていない、必要としていないということも頭においてください。事件などで報道される悪人、皆さんがさげすむ人以上に、皆さんは表現において価値を生じさせていないことを知るべきです。
コミュニケーションなどは、それぞれ自立した異なる価値をもったもの同志が関係をもったとき、ようやくふれ合い、触発することが生じるのです。そこではじめて、生き方が歌にも結びつくと思います。
力がありあまってきたら、歌えばよいのです。少ない力でも振り絞ったら、満ちてきます。自分の力を凝縮して、人に何かを伝えようという意志と欲をもってがんばってください。
◯参加者の抱負アンケートより(ダイジェスト)
フレーズを自分の作品にする/やせる/うるさい声をなくす/耳を養う/自分を出すことが苦手なので克服する/体力をつける/練習量を昨年の倍にする/読む/これ以上、体力を低下させない/頭でっかちにならずに実践でつかむ/いろいろな角度から攻める/上っつらの自分を捨てる/365日トレーニングする/毎日を完全燃焼する/明日はないという気力をもつ/やらないで後悔するのではなく、やって反省する/歌以外からの刺激を受け、視野を広げる/無駄な時間を過ごさない/人から何か言われても気にしない/社会にも目を向ける/自分を抑えず、本能のまま生きる/自分の存在を明確にする/1回のレッスンに目的をもって取り組む/危機感をもつ/自分に厳しく/音の感じ方を改める/1曲を1年かけるつもりで煮つめる/とにかく実行する、思いついたら即実行/日常で常に声を意識して生活する、など。
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レクチャー オリエンテーション 360300
すべてのレッスンでやっていることは、まずは体、息、心、声を一つにして、それを展開することです。
なぜ、歌を歌うために、ヴォーカリストをめざしているのにモノトークをしたり朗読したりするのかというのは、2年くらいたてばどのくらいそうすることが大切なのかわかってきます。あるレベルまではいけても、素人の域を破れるかどうかというのは、モノトークや朗読のようなことがきちんとできるかどうかで決まります。
きちんとやっている人は、明らかに差がついてくるので、誰にでもわかります。誰にでもわかってはじめて、力がついたということです。この研究所で問うていることは、ただ間違えずに歌えばよいということではありません。ピアノが正しく弾ければよいということではないのと一緒です。そこから先のことを問うているのです。それは自分を自分で表現することで、そこからがおもしろいのです。
ここで提供している材料はたくさんあります。その材料のなかで自分で表現しては、気づいて取り組んでいくしかないのです。
グループレッスンについて
ここでのレッスンをグループレッスンにしている意味は、自分一人でトレーニングしているより、同じくらいのレベルの人たちと一緒にトレーニングすることで、体、声、表現などの判断力、耳が養われることにあります。他の人の体や声を聞くことにより耳が養われ、後々に自分の体や声も客観的に判断できるようになります。判断がつけば、一人でトレーニングができるようになります。
そのための2年間だと思ってください。2年間で、トレーニング、取り組み方、考え方などをひとまず土台にのせてください。
グループレッスンというと、まわりの人に合せて行なうと思われがちですが、自分のやり方、呼吸、体調に合せて自分のペースでやるべきです。ソロのヴォーカリストなら表現しているかぎり他の人と声が合わないのが普通です。声が合うということは、合せることに頭が働いてしまって表現しようとしていないということです。
最初は、これまで皆さんが受けた日本の教育における勉強のやり方と違う、ここのやり方に戸惑う人もいるかもしれませんが、日本の教育の方がゆがんでいるのです。日本人は、音声で表現をしないようにという方向に考えますが、ヴォーカリストは、表現する人です。表現をどんなにやり尽くしてもそれでも足らない場です。常に120パーセント、出すつもりで取り組んでください。
.「ハイ、ハイ、ハイ」
ことばの頭と語尾をすべて声にしていってください。最初の「ハ」が息もれしないようにしましょう。声を出そうとしたところから声にします。
「ハ」で出した声と、「イ」とは同じ声になるようにします。よく耳で自分の声を聞いて確認します。どんなことば、発音になろうとも同じ声、同じ体の使い方でいえるようにしましょう。
「ハイ」3回、繰り返すとき、体、息は一つ(一息)にし、上に抜いてしまったり、音質が変わったりしないようにしましょう。1度目の「ハイ」をあと2回繰り返すというイメージです。3回の「ハイ」が違うものにならないようにしてください。
声を統一できるようになったら、音を一音つけてみます。自分が楽に出せる音を探し、体が入りやすいようにします。このとき大切なのは、自分の出したい音ではなく、出しやすい音を探すということです。
「ハ」から「イ」にすぐにいかず、少しテンポをおとして自分の呼吸、体に合せてましょう。同じ音質になっているか、耳でよく聞いてください。
「ハイ」で息もれしてうまくできないときは、「アイ、アイ、アイ」にことばを変えて、声にする感じをつかんでみてください。
声の芯が捉えられてきたら、それを太く、大きな声にします。この出しやすい音のところで太く大きくできなければ、他の音にはいけません。ここで出せる以上の声量も、歌には出ないのです。目一杯、大きくつくりましょう。
口先でことばを切らないようにします。のどを開いて、息を吐くところからはじめてください。
のどを痛めるなどということはあまり考えず、自分の力で大きな声が出るまでやってみることが大切です。そこまでやってはじめて、何かに気づきアドバイスできることが出てくるのです。自分の最大限の力を出し切ってください。
全体的にいえることは、発声以前の運動不足です。ヴォーカリストは体が資本であり、楽器なのです。体をつくるために、トレーニングの回数、量、集中力は不可欠です。まずは、自分の体を自由自在に動かせる状態に、いつもしておくことです。
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Q&A (福島とトレーナーの回答) 360511
Q「規準」ということばをよく耳にしますが、どういうことですか。
発声についてなら、正しさ、ということは確かにあると思うのですが、歌については「基準を示す」ということが、何の意味をもつのかわかるようでわかりません。
体のついた声と音楽上の最低限の約束事を身につけた上でなら、好きなことを自由にやっていいと思っていたのに。その先にまだ「規準」というものがあると思うと、当てが外れたような気持ちになります。私は、発声のトレーニング以降は、そんなもののないところで歌っていきたいと思っています。
好きなことを自由にやってよいのは、別に発声が身についていなくとも、本人の勝手でしょう。
どう歌っても歌になるというなら、発声の勉強なくとも、何をどう歌っても歌になるということでしょう。好きに歌ってよいというのは、その通りです。
ただし、基準は、その先でなく、その前にあります。
そのことがわからない人に発声の正しさと音楽の基礎を身についても、魅力的な歌にはならないように思うのです。
どんな人でも、すぐれた歌しか心地よく聞かないのであり、それを規準といっています。
歌が自由なのは、カラオケやアマチュアで、プロとして人前に出てやる人は、規準を超えなくては自由でありえないから努力するのです。それは明らかに発声をも含めた歌の基準です。
だからこそ、トレーニングも歌もやっていくべき目標や実感ががあるのに、それがどうでもよければ、ヴォーカリストこそ困るでしょう。
ちなみにここでは、プロとアマチュアは区別していません。歌を人前で歌う以上、プロの基準は、立場上、想定しています。それに足りる条件をヴォイストレーニングで課しているからです。
Q ブレスのときに肩を動かしたり腹をふくらませたりしないでも、瞬時に息を吸い込めるようになるべきと言われたが、、吸い込み方のポイントが、いまいちつかめない。やはり、肋骨がふくらんだり腹が動かないと、息を吸い込んだ感じがしない。
今までとは、違う呼吸法だと思います(あなた自身が)。普段から腹式で充分に呼吸しているという人はあまりいませんので、いざやろうとすると感覚をつかむまで時間がかかると思います。腹式呼吸のポイントを少しずつ掴んでいくことです。最初は、意識的ということでしょう。
Q.声を前にもっていくようにと言われたが、胸の中心で深く声のポジションをとろうとすると、この声を前にという意識と逆の行動をしてしまうが、どのようにこの二つの目標を同時に達成できるのでしょうか。
初心者で、ここまで一度に行なうのはまだ無理です。それよりも、一つひとつ、体でよいポイントの感覚をつかんでいくことです。あせらず地道にやるしかないのです。
Q ミュージカルなど動きながら歌うと、きちんと歌えない。
たとえば、バスケットで、練習ではシュートが入るのに、試合では入らないというのと同じことです。ギターやピアノを弾きながらだとうまく歌えないというのを考えてください。
基本が応用できていない。すなわち、基本がそこまで充分に身についていないということです。
ステージでは、よほど基礎がないと歌っているうちに乱れていくものです。
でも、ステージでの目的は、人に伝えることです。完全な発声をきかせることではありません。
そうしたら、ヴォイストレーニングに戻って、型をやると考えればよいのです。試合ばかりやっている人が一流になれないのと同じことです。練習する時間にフォームをつかめればよいのです。
Q 外国人のようにパワフルになるためには?
当人の意欲しだいです。当人の意欲が9割あれば、ここのレッスンは充分、活かせるでしょう。
Q.日々、トレーニングで必ず意識するべきこととは、何でしょうか。
理想的には、朝起きたときに、すぐにでも声が出るような体の状態にもっていけること。体が起きるまでの時間のロスを減らす、なくすことです。
よい状態で一日送れたらよいでしょう。
そこから、トレーニングできれば、マイナスのトレーニングをしなくてもすみます。どれだけ理想的に声が出せる状態を常にキープできるかということです。
カゼをひいているのに無理に声を出す必要などありません。ですから、逆にマイナスのことをしないと考えてもらえばよいと思います。お酒を飲んで声帯がはれているとき歌うなどしないことです。そんなことをするなら、寝ていた方がずっとましです。寝て、体調を整えて、体力トレーニングでもし、声を出さず息を吐いて息を深くしていることです。
息のトレーニングを重視している理由は、最初、声が出ないうちは息の方が体に結びつきやすく、感覚がつかみやすいからです。
Q 一日の練習時間はどのくらいですか?
時間より質です。声に関していえば、わからないうちにいくら声を出しても、却ってマイナスになることが多いからです。量をこなすことは前提ですが、それだけでよくなれるわけではありません。それよりも、24時間、音楽、歌、声の意識を流しておくことの方が大切です。
Q低音域、高音域、声質を安定させるには?
ベースの声が安定すれば、問題ないと思います。口を大きく開ける、口のなかであてる位置を変えたりする必要は全くありません。ふしぜんに口をあけても逆に表現力が劣ってしまいます。
声に関しては、あごを動かしたり口を動かしたり、部分的な要素を入れれば入れるほど、体が使いにくくなります。一つに捉え、それを徹底的にやっていけば、安定していくでしょう。
Q 地声とファルセットの切り換えについて
トレーナーが歌唱表現のなかで教えることはあります。ファルセットもアプローチとして行なっていますが、切り替えは、あまり早くに決めつけないように用心しています。
まずは、すべて地声で捉えます。日本人でもしぜんにできるはずのことが、なぜできないのか。それは、一音でもいろいろな音色があるのに、その可能性を全く探らず、広域の音をとろうとつくった発声で限定していってしまうからです。
体から息を吐き、コントロールすることを身につければ、チェンジできるはずです。
ですから、この研究所では、地声中心に徹底的にやっていきます。
ファルセットや裏声で歌う場合、本当に天才的な声のよさ、音のおき方ができないと、ほとんどの場合、それだけでは通用しません。
地声の方が、感情表現もしやすいし、体も強くなっていきます。チェンジの問題は、高音の音のイメージによって、その人の表現から考えていくことです。
Q トレーニングの時間帯について
1日のうち、決められた時間帯にやれば、同じ体調での声の比較ができてわかりやすいとは思います。