一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

ステージ実習コメント   284

ステージ実習コメント

 

その1

 

こういう場では、みんながお互いに盛り上げるということじゃないけど、何かをそこで出してくれないと、せっかくの休日がムダになってしまいます。お互いにもちえる限りのものを出し切って、今日一日を精一杯がんばる。それがまず第一原則です。

 

できるできないところではなく、音程とかリズムに関しても、皆さんが出すものは同じで、やっぱり意気込みだと思います。完成度を要求しているわけではないし、ここでオーディションしているわけではない。

要はそこに、こいつ将来のばしていってやろうとか、見てやろうとか、私や仲間にそう思わせられるかどうかということです。他の人間を巻き込めるようなものが出てればよいのではないかと思います。

 

二時間、非常に長かったんですが、ほとんど数分しか密度はなかったのではないかと思います。この密度を高めることが大切なのです。

来年の同じ時期はできたら皆で、二時間は、二時間の密度があるように、がんばってください。

まあ、後ろにいる二年目の人に言っているのではないです、一年目の人に言っています。

もっとはっきり言うなら、ここでこんなくだらないことやらせるなということです。

 

音程とかリズ厶とか、こんな練習の楽譜の読みみたいことをやって、一日疲れて、なんで来たんだろうーなんて思いませんか。やらなくていいということではなく、自分で片づけておけということです。

 

人前でお金をとりながらヴォーカリストとして歌って、音程がわるいとかリズムがくるっているというのは、はっきり言って問題外です。それだけのことをどこかで自分でもやって片付けておかなくてはならないということを、確認してください。

 

一昨年くらいまでは、ここは声だけを中心としてやっていたのですが、去年からは、オールマイティに万全の体制をひいています。今日の課題ができないということは、いかにいい加減にここを利用しているかということです。

 

この二年で一年目の人は完全に仕上げてほしいと思います。今日ぐらいの課題であれば、三ヵ月ぐらい一所懸命やっていれば難しくないという感じがします。

 

それから、もっと気になったのが、人前に立つときの言い訳とか態度、そのへんが甘いことです。

今の芸能界であれ、こういう態度で人の前に立った場合は、もう半分は、こいつらに会いたくないという感じで見られ始めます。アイドル歌手よりもだらしない。彼女たちのプロ意識を見習えと言いたい。

何であれ、自分の言い訳をここでつくらないことです。

 

自分の作品の中に言いたいことを入れればいいわけです。

それから、あきらめが早すぎます。こちらがストップしろ、やめろと言ったらやめればいいことで、自らここまでしかできません、と言うなら始めからやらないでください。

自分で自分の力を見極める必要は全然ありません。できるだけやって、もう聞いてられない仕方ないなとこっちがストップかけるまでやるべきです。

 

力がないのはわかっています。ない力をいかにあるようにみせてくれるのかをみているのです。そこで、できませんはないでしょう。存在が消し飛んでしまいます。

 

アーティストだと、この場でできるなら何も練習しなくてよいし、ここでやらなくてよい。力だけが問われる世界です。

そのかわり、できないということがわかったら、死にもの狂いでやってつけていかなくてはなりません。そうやって一つずつ、問題をつぶしていかないと、後で取り返しがつかなくなってしまいます。

 

声がでるようになって人前でステージやるようになって、そんなところで、ここにきたばかりの人と同じレベルの音程やリズム練習をやれるのかというと、恥ずかしくてできなくなってしまうでしょう。それでもやるべきなのですが。

ここでの二年間というのは、唯一の基本を固めるチャンスだから、きっちりやっておいてほしいものです。

 

 

今日もはっきりこういうことがわかると思うのですけど、

力がある人にとっては、どういう場も得だということです。そこを自分に巻き込んで、生かせるからです。

力がないと損です。この力とは、出せるカよりも学ぶ力、吸収する力ということです。

 

これはどこの世界でもそうです。ここでは何を言っても,まだ皆を平等に扱っています。

力がなければ一フーズも聞かずにおわり、力があれば何曲でも歌わせてくれるというのが、実力世界です。

 

ここは、表向き、二年目まではほぼ平等です。でも、それを忘れないでください。損したくなければ力をつけていくということです。ヴォーカリストは多くの客の時間をあずかるのですから、それだけの責任はあるのです。

 

基本的なものがなければ迫力なり、はったりでも何でもいいですけど、その場で精一杯やっている態度が見えなければ評価する気にもならないでしょう。これは私自身の感覚だけじゃなく、ここにいる他の先生も皆さんも、同じだと思います。

 

いや一般の人の方がきびしいと思います。何も言わず、あなたを見捨てていくのです。ここの場合は,研究生できてもらっているから、いやでも一応、形だけは対応きちっとします。

 

それから,ここの今のレベルに合わせないことです。このレベルでできているから,ここで認められるから、このレベルでいいだろうということじゃなくて、こんなレベル蹴飛ばしてどんどん高いところに行ってください。

 

いつまでもここを見ていてほしくない。こんなことは、できない方がおかしいのです。

入ったばかりの人はとりあえずのところ、ここを基準にしてもらっていいのですが。早く上の人を抜いていってください。

 

 

ライブハウスもそこに出られるかとか、出ようというところをめざすのではなくて、そこを一人で専有して客が入りきれないほどになることをめざして、トレーニングをしてほしい。

 

出演が最高の目標では、空しいという感じがします。ここで客が一杯入れられるようなら本望だとか、そんなことじゃなく、今ここにいる四十名ほどの人数でも、お客を集めるというのもたいへんなことですね。

 

もっともっと欲を出していってほしいと思います。みんなも苦しい思いをして、くやしいと思って、何倍ものもとをとろうと思うことです。そうしたら対応の仕方が一つひとつのこういうイベントに対しても、もう少し変わってくるでしょう。

 

それから、ゴスペルとかヴォイス塾の中、上級クラスの方も、今日ぐらいの課題の“常識的”なことがきちんとこなせて来る分には、こっちも最高のものを早く出せます。

その最高の中でやっているのですが、お互いが勉強せずともよいとなり、足のひっぱりあいになったら、終わりです。

 

例えば音程をとるのに四十分かかる。そしたらレッスンは残りの時間でできないわけです。時間が短いのではないのです。それでグレードを一つの基準にして、どの先生が来てもすぐ対応できるというような方向にもっていくつもりです。

 

そうでないと、よい人、がんばってる人がやめてしまいます。

やっている人に損をさせぬようにするのは、私の務めです。

下のレベルの人も上のレベルの人も、それぞれ人の何倍も努力してほしいものです。

 

 

上のクラスの方には、奨学金で援助していきたいです。その人間がここに来ることで、他の人にも充分の価値があるという場合です。アーティス卜とはそういうものでしょう。

いくら払っても場をけがすような人に来てもらっても仕方ないし、お金を払ってでも価値ある人に来てほしいと思ってます。そういう人になることです。

 

活動をキープしていくときに、経済的な要因で来れないというときには直接、相談してください。

私自身は、その人のここに来た最初のレベルよりも、その人の努力、一所懸命さを買います。

そういう人は、いつの日か、伸びているからです。

ブロの人でここに来ても、おごりたかぶっているために、一つも伸びぬ人もいるのです。

 

そういう人には、構うつもりはありません。見てなくても、どのくらい努力しているかは、見えるものです。作品となって少しずつ表われてきます。

内なる自分と闘って、魅力的な人間になってください。それが唯一の近道です。

                                               

 

その2

 

 

私はあなたがたを評価できる手腕などないのですが、なぜかかなり正確に否応なしに評価できてしまうんです。ほんとうなら評価できないというものを持ってきてくれるとありがたいですが。

歌には基準などないと、好みの問題のレベルに早く入って欲しいものです。

 

それからヴォーカルの基本のことを学ばせるようなことをしてますが、これから入る人は、二年で最低のレベルを終了させるようにしていきます。

ステージを人前でやりだしてから基本に戻ろうと思っても,なかなかできないので、この二年の中で発音とか徹底的に叩き込んでください。

この程度の実習であれば、楽しんでいけるようになってあたりまえだと思います。

 

声に関する評価、ヴォーカルに関する評価も、アンケートをもとに絞り込んだアドバイスをしていこうと思います。

「俺はこの課題、完璧だったからここを出ていいだろう」と言えるくらいになって欲しいものです。

できないバツとしてこの時間まで残されたというふうに捉えてください。

 

今後、いろいろな活動をやっていくでしょうが、ここでは格好をつけるのではなく、目一杯恥をかいて失敗してその経験を積んでいってください。そして、外での人前では恥をかかないように。それまでの時期を大切にしていってください。

 

恥をかくのは、上達の秘訣です。心地よくないのが力のつく一番の秘訣です。

ここでできてしまうのなら、ここにいる必要もないのです。そこをきちんと見極めてほしいと思います。

 

評価に関しても、みんながここにいて惹きつけられるだけの歌が本物かなと思います。

私自身も刺激されるときもあります。

そういうものは、何なのかということをつかんでいってください。

 

評価は難しいのですが、根底に基本的なものが必ずあります。

音楽的基本を学ばずに歌っているような人でも、その上にいった人なら必ず持っている基本というのがあるのです。

 

これをふまえなければ、道具の使い方を知らないで作品をつくる、ルールを知らないで一流選手になれるというのと同じで、不可能です。

課題をクリアすることを怠って、口実をつけ逃げにまわらないことです。壁にどんどんぶちあたっていってください。

 

今日のレベルなど一年どころか三ヵ月で、ものになってしまうようなことだと思います。

ただ、やってしまえばいいと思います。そこで逃げるとどんどん後回しになるだけです。

 

もう一つ、はじめて、音程、リズムから歌の課題曲、自由曲とぶっつづけでやってみたのですが、音程やリスムに自信がないと、結局、自分の歌にまで悪い影響を与えてしまうわけです。

音程、リズムなんてどうだっていいし、自分の歌が歌えればいいということであっても、こういう所でやってみたときに自分の歌にそれが少しでも影響するのだとしたら、きちんとやっておかなくてはいけないということです。

 

歌も音程、リズムが前提としてあります。プロじゃなくても、ある程度、音楽を聞いていれば一般の人でも音感、リズムには敏感です。この問題は、後には解決しにくくなっていきます。

音感,リズム感の基本のほかに、まだまだヴォーカリストとして必要なことがあります。

 

しかし、この二つは、身につかないと作品は得られないのです。声についての問題が一だとしたら、その努力の十分の一の努力も今要求しているヴォーカルの基本について必要ないでしょう。それをやらないのは、怠惰以外の何でもありません。

 

結局、この二つが道具の使い方やルールと同じです。これは誰でもやればできることですから、必ずやっておいてください。それから、楽譜を読み込むことで曲の解釈とかアレンジとか勉強ができます。読譜というのはやっていない人には、不利になります。歌う上での基本ともいえます。

 

グレードBに残りたい人は、この二〜三ヵ月で課題をこなせるようにしてください。ゴスペルの上級に行きたい人も同じです。レッスンのなかでも、リズム、メロディが完全にとれて自信を持ってできる曲は、声がでます。

 

たかだか楽譜読みで自信をなくして、授業のレベルが下がってしまうのでは、情けないことです。そういう問題は、自ら解消していってください。このチェックは、また違う形でやります。がんばってください。