一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

鑑賞レポート  326

 

鑑賞レポート  326

 

【California Screamin Vol.1/The Mamas & The Papas, Jefferson Airplane, Santana and MORE】

 

音楽に対する愛がステージを満たしている。どのシンガーも歌以前に、自分の音楽を感じさせる。そのためのサウンドであり、声である。歌いたいという気持ち以前に歌いたい「歌」が必要だ。その「歌」をもっていないのは、シンガーではない。彼らをみていると自分が歌っている姿が見えてくる。彼らのようになりたいからだ。そして、自分にしかできない歌があるのもわかっている。歌う気持ちに「まだ」というのはないのかもしれない。ジャニスの叫びにまた泣かされた。

 

 

【The Giants Of Rock'n'roll/James Brown, Ray Charles, Little Richard, and MORE】

 

ソウルシンガーのすばらしさ、全身で声を出しているという感じ、のどに力が入っていない、演出がとてもよかった、表現がとてもよい。

 

ことばが出ないほど、すごかったです。圧巻でした。あれだけ声が出せるようになったらとしみじみ思いました。なんかマイクにいちいち息が入っているなあ、と思った。体ごと声がぶつかってくる、という感じでした。

 

みな歌にノリがなって、声自体も、一つの魂のような感じがした。また、ピアノを弾きながらも自由自在に歌っているのにはおどろいた。パフォーマンスも見ていて楽しいものがあった。

 

とにかくシンガーの姿勢がよい。歌っているとき、おどっているとき、もう無意識にピッとしている。あと、シャウトするとき、大きく口をあけている人もいるけど、そんなに口をあけずに大きくシャウトすることもできるのだと気付いた。あと、あたりまえなんだけど、ものすごく個性が強い。自分の得意なこととか、歌い方とか、マネされてもぜったいぬけないものをもっていて、それがいい味になっている。おそらく人によっては、にがい味になるかもしれないけど。とにかくカッコイイおやじたちだ。

 

ジャイアンツオブロックンロールを見て、やはり外人ヴォーカリストの歌はパワーがあるし、ノリもいい。シャウトしてもぜんぜん、ふしぜんさがないし見ていても気持ちよかった。

 

最初に感じたことは、出演者全員のパワーだ。ジェー厶ス・ブラウンのパワーは特にすごかったと思う。体の中からの、魂の叫びという気がした。レイ・チャールズは体が鳴っているという感じがして、本当に体全体使い切ると、あそこまで情熱的な声が出るものかと思い知らされた。(もう少し、B.B.KINGを見たかった)

 

 

【Tina Tuner Story/Tina Tuner】

 

低音から高音まで、どの音域でも、聞いている側にも気持ちよく伝わってくるのは、さすがだと思った。ポジションのとり方や体の芯から通っている、その体づかいというか、表現しにくいが、そのパワーは、まねできないほど、すごかった。そのあたりが、アーティス卜として世間が認める部分なのだと思った。

 

ティナ・ターナーの人柄、生い立ち、ステージング。会話だけでもびっくりするくらいの声の持ち主が、あっちにはゴロゴロいるということ。逆境に負けるなということ。

 

 

The Doors In Europe/The Doors

 

ヴォーカルが低音のひびき、太さ、声量を高音でも生かしていて(プロだから当然ですね)すばらしかった。先生が言っている意味がよく理解できた。聞き手をひっぱり込む表現力、パワーがすばらしい。

 

モリソン最高!ドアーズ最高!「音楽が終わる時」は傑作だ!動と静。すかした野郎だモリソンは。

 

 

【メイキングオブ三大テノール世紀の競演/Jose Carreras, Placido Domingo, Luciano Pavarotti, Zubin Mehta]

 

声のすごさ。歌のすごさを感じた。

歌にもトレーニングにも、ものすごい集中力で取り組む必要があると思った。

 

すばらしかった。パバロッティの明るい声、カレーラスの優雅な声、そしてドミンゴの華やかな声、そして三人の身体に惚れぼれする思いだった。特に、ピアノ、フォルテの押し引きがすごい。フォルテの声、盛り上げ方には、鳥肌が立った。そして何より、メータを含め、みなが音楽を心から愛していることが、伝わってくる。

 

「三人が競演することで、重い病気から復帰したカレーラスを歓迎したかった」というババロッティのことばに打たれた。みんなとても楽しそうで、深い目をしていた。芸術家となるまでに、厳しく自分と戦ってくると、あんなに魅力的な人になれるのだろうか。共演者の人間的な大きさ、深さに心を打たれました。しゃべっていても歌っていても、声が口から出てくるのでなく、上半身全体からひびいてくる感じがした。低い音域へどこまで下がっていっても、湧水のように声が舌から湧いてくる。歌を聞いていると、自分の背中の筋肉が意讖される。身体の差を思い知らせれる。どういう状態でいてもコントロールされている声。

 

 

【The Great Rock'n'roll Swindle/Sex Pistols

 

日本で言うホコテン系の音楽だなーと思いました。単純でわかりやすく、汚いことばや人をひきつけることは、誰もが大小かかわらずもっている欲求に訴えるので、好き嫌い関係なく、インパクトが与えやすい。それを手だまにとっているように見せながら、哀愁がただよっているのは、それも計画通り?それにしても、パンクっていうのは体力がいる音楽ですナー。

 

楽器担当者に比べて、ヴォーカリストはかなり自由なスタイルで演れるんだな、ということ。カリスマ性のあるなしも、ヴォーカリストとしての力量に大きく関わってくるんだな、ということ。スタイル、生き方、その人そのものが音楽なんだなということ。

 

セックスピストルズは、暴力的、反社会的という位は知っていた。どうもこの手の音は苦手で避けていたか、改めて見てみると、よし悪しは別にして聞き手を引き込むというか、圧倒するものがある。先生のよくお話しになる、声以外の残りの九〇パーセントの大切さ。形はどんなものであれ、極めればそこに何かが生まれる。自分は残りの九〇パーセントがいかに欠けているかということ、やはり何かを成しとげるには、極限のパワーが必要だということ。

 

音楽ってこんなに爆発するもんだと、びっくりした。やっていることがメチャクチャなのに、ひきつけてしまうのは、ピストルズのカリスマ性のせいもあるんだろうけど、発散されるエネルギーがすごいからなんだろうなあ。どんなに言いたいことが頭の中にたくさんあったって、あんなにドカンとなげつけられる人って、そういないと思う。ある意味じゃ、時代が、彼らのパワーを爆発させたんだと思う。

 

ロックの持つパワー、ジョニーロットンの表現の方法、圧倒的なパワーに改めて、新鮮さを感じた。マルコムマクラレンのサクセスストーリー的なLD。メンバー全員、ヘロイン漬けでドロドロなのがよい。パワーパワー、全部が勢い。絶望感を積み重ねていって、絶望の希望を造り上げているピストルズ。(マルコムの手口であろうが…)最近、“パンク再熱”とかいって、パンクがまたもてはやされているが、日本では、このようなムーブメントは起こらないであろうと推測する。

 

セックスピストルズ、音楽性は好きじゃないけど、ハートはよくわかる。又、自分も常識に満たされた人間だなと、改めて思った。

 

 

【Lady Day-The Many Faces Of Billie Holiday/Billie Holiday

 

「奇妙な果実」というタイトルは知っていたが、あんなすごい内容だとは思わなかった。歌詞を同時に見ることができたのでよかった。ゾッとするほど、状況がストレートに浮かんでくる。グループレッスンでやっている歌詞を読み込み、自分なりの解釈を入れることの重大さが身にしみた。他のどんな人でも、ビリーホリデーみたいには歌えないだろう。

 

ことばとその解釈があって、その次にメロディがあるという感じ。語りかけているようだった。何の想いもないところに、こういう表現はできない。でも、それを表現するためには、声を自在にコントロールできることが絶対条件だということもわかった。ことばがそのまま歌になるとは、こういうことなのだと思った。歌がうまい、とか声がいいとかは関係なくて、ビリーホリデー自身が、歌の中に凝縮されている、それが伝わってくるのがすごい。テクニックを超えるもの、あれはなんなんだろう。