一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

アーティスト精神とその条件   161

アーティスト精神とその条件

 

 

個であれ、孤であれ

他人に頼らず、

所属意識を捨てよ

 

どこの世界でも夢をしっかりと持ち、実現できる人は少ない。

足もとをしっかりと見つめ、やれること、やるべきことをしっかりとやり、

やるようにやれるようにしていくのが,クリエイティブな生き方だと思う。

 

だが、そう生きている人は少ない。

続けられる人は稀少な存在だ。

 

だから、やりたい人やれる人は、どんどんとやりたいようにやっていけるし、

そうでない人はいつまでたっても迷いをふっきれず、動き出さず、

才能がないだの、まわりが認めないなど、恨み節ばかり言っている。

 

こう言われても他人事のように思っている,あなたや君、

気づいてみれば、自分が当事者であることが多いものである。

 

だからなんだ、といっても、大したことでもない。

大半は、そういうのが、人生なのだし、否定されるものでもない。

 

ただ、自分の夢を実現しようと思っていたことがあったのなら、

そういう人を見かけたら、邪魔をしないでほしい。

見守って、ときに助けてあげてほしい。

 

誰であれ、一人で実現できることは少ない。

まわりの人がどのように対処するかで決まっていく。

あなたや君が手助けしたら、その成功の一助となる。

関わった人間の成功は,あなたの成功でもあるのです。

 

この場がそのように働いていくことを望んでいます。

 

 

 

 

日本の音楽界とここの役割について

 

 

場ができるということ

 

場所ができると、樣々なことを発信することが可能になります。

ここだけのことでしたら、駅から遠くても、皆さんが来てくれたでしょうし、

もっと大きな場所の方がよかったかもしれません。

しかし、拠点としては駅から近いところが、好都合なのです。

 

当初は自前のスタジオを持つつもりは全くありませんでした。

人材は,外で活動して、開花するものだと思うからです。

 

しかし、場所を一つキープするのは、活動にとっても有効です。

場はあれば、課題を前もって練習することもできるし、

その場でなされていることをミックスさせて、

一番濃いものを還元させ、伸ばしていくこともできます。

 

外のスタジオでは、ちょっと使いたいものがあっても使えないし、

持ってきていないと機材のことも問題になります。

 

このスタジオは、外に対しても、外からも防音となっているので、

アナウンスブースと同じで、ここの活動も発信できるのです。

 

アーティストの集団とは、先生がいて、そこに人が集まってきて、

何かをやるのではありません。

何かやっていく人が一時的に集まっているものです。

 

いずれバラバラになっても、それぞれが活躍していけば、よいことです。

一つの踏台として、同じ時期,同じ場にいて、真剣に切磋琢磨したことは、

大きな強みになることでしょう。

 

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交流の場としてのオープンスペース

 

皆さんの中でやりたいことがあれば、なんでもとりあげていきます。

発信することに対しては積極的にやっていきたいと思います。

交流の場として、皆さんの意見を聞いていきたいと思います。何かきちんとしたことをしていきたいと岑えています。その企画があったら、どんどん出してください。

 

例えば、一人ではコンサー卜ができなくても、ここのメンバーが集まれば可能になるでしょう。集団の力というものは確実に存在します。それは力のある人にもメリットになるし、力のないうちはそれもそれ以上にメリットになるでしょう。

また、ヴォイストレーニングとは切り放して、ヴォーカルだけに照準をあわせたクラスを作りました。そこでも何か生まれる可能性が見えてきたからです。

 

今のところ、考え方をしっかりと確立できている人が集まってきていますが、いずれは、誰もがそういう人に育つ場にしたいと思っています。そのためには、私だけが旗を掲げて説明するというのではなく、しっかりとした考えを持った人がいつもその場にいて、励まし合うことが必要です。

 

必要なのは、愚痴を言い合ったり、傷をなめ合う関係ではありません。怠けたいと思ったときに、「あいつがいるから、かんばらなくては」と思えるような関係です。

相手の一つのよいところから、十個も二十個も学べばいいのです。悪いところを見て愚痴を言っていてもしょうがないのです。積極的によい方向だけに目を向けましょう。

どんなことを自分が考え、それをどこまで深められたか。それが自分の力になるのです。

 

こんなことをいうのは、十八才まで今の日本の敎育を受けてきて、個人的な自立がなされていないからです。まわりに合わせる生き方が染み付いています。ひがみ,妬み、嫉妬などが渦巻く。

 

簡単に考え方を変えられる人はほとんどいないでしょう。しかし、一つのことをきちんとやってきた体験を持っている人、本当にやっていこうとする人は、自然とポジティブなことを考えていくことになるでしょう。

 

ここでは様々な実験的な試みもやっていくし、懇談のできるようはスペースにもしていこうと思っています。解放されたスペースにし、情報を得たり、いろんなものが見られたり勉強したりできる場にしたいのです。単に音楽やヴォーカルに特定せず、どんなアーティストもそれ以外の人も。起業家や映像関係の人か来てもいいし、皆さんには、そういう人たちから学べるだけの度量を持っていてほしいと思います。

 

芸の身につけ方は、スクールやカルチャー教室とは違います。その根本にあるのは、あくなき基本の繰り返しです。飽きても飽きても、なおまだそれに執心しているような心があれば、必ずものになっていぎます。

 

普通の人は、その繰り返しができないのです。それは自分の創り出したいもっと大きな世界がその先に見えない,いや感じられないからです。基本の繰り返しは面倒ですが、そのために耐えるのです。すると、これほどおもしろいものもないとなるでしょう。

 

私は、よく、「その声だからヴォイストレーナーになったんでしょう」と言われます。しかし、最初は皆さんと同じ、いや、今のメンバーからみれば最低レベルでした。十年、続けたので、このような声になったのです。どこまで一つのことに馬鹿になれるか。どこまで自分をいじめられるか。それが成功するかどうかの分かれ目です。

 

自分に非凡な才能があり、十八才のときに、すごく歌えていれば、ヴォイストレーニングはやっていなかったし、こういう声を求めるることはなかったでしょう。平凡な人間が、平凡だけれども繰り返しやっていけば、声は当り前に変わっていくのです。私はそれを身を持って体験した上で実践しています。

 

今までは二年で区切っていましたが、これからは、その先のもう二年、さらに二年があってもいいのではと思っています。そのためには発表のスペースがあり、それがモータウンのアポロ劇場のように、ステータスが高く、そこに出るためにがんばるという登竜門にしたい、そういう場を設けて、実力と評価を上げていくというのが理想的です。そこで自分の実力やオリジナリティーが発揮できるような世界にしていきたいです。

 

場というものは、できるかぎり、クローズにするべきではなく、オープンにしていくことが必要です。ここに長くいることはひとつのキャリアとなるでしょう。でも、新しい人の受け入れを嫌だと思うなら、それは精神的に若くなくなってきた証拠です。

 

それを価値に変えられる人と価値を生み出せない人がいます。

アーティストとして、自分の価値を外に出して問うことと、そこからのリピートをきちんと吸い上げていくことを常に心がけましょう。そういった研鑽の場は多いほどいいのです。

ここもその場の一つとして利用してください。

 

大ステージでは実験的な試みはできませんが、ここでならなんでもできます。

生徒の一人という意識は捨て、アーティストの一人として、

「他の人がなんと言おうと私はこれがやりたい」

というものを、稹極的に出していってください。

 

 

 

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代々木の一軒家がライブハウスに

 

X′mas  partyでは、ここのスタジオが一時、

熱気をおびたライブハウスとなりました。

これぞアーティスト、ヴォーカリストの力と素直に感動しました。

 

歌のうまいへた、音楽性のよしあしよりも、

もっと大切なものがそこにかいま見られたからです。

なぜそこで歌うのか、なぜ歌わなくてはいけないのか感じられたと

いうことは、何においてもうれしいことです。

こんなおんぼろ家に生命の息吹を入れてくれてありがとう、と感謝します。

 

こういう形で機運が高まっていってくれたらよいと思います。

 

時問が押しすぎたため、ケーキを待てず、

早く帰る人には、こう言いました。

「アーティストだから、一分の歌が歌えたら充分だ。」

そこにすべてのメッセージが入っているのです。

声が大きくて、代々木の駅前で

おまわりさんに捕まったであろう人に優秀賞を捧げます。

 

 

(「心の旅」)のコメント

「ポケットに」の「ポケ」のところ、はずしていた人もいました。

こういうときは伴奏に軽くのせるか、強めてぶつけて伴奏を殺すかです。

なごやかな雰囲気でよかったのですが、緊張感は失わないように。

うまい人には厳しく、うまくいかなかった人にはやさしく、

それがアーティストシップというものです。

次回の健闘を期待します。