一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

レクチャー ヴォイストレーニング ヴォーカルQ&A 19853字  202

 

レクチャー  202

 

 

ヴォイストレーニング ヴォーカルQ&A

 

 

Q.うまく声が出るときと出ないときがあります。いったい声はどうして出るのでしょうか。

 

A.音は空気の振動によって、空間を伝わり、人間の耳の鼓膜を振動させて、私たちに伝わります。人の声も音の波動ですから、空気の振動で伝わっているのです。

その元の音をつくるところが声帯です。

声帯は“のどぼどけ(喉頭) ”の内側にあり、二本の伸び縮みのする靱帯が,空気の流れ(吐く息)で閉じたり開いたりしています。その気流が振動すると、喉頭原音とよばれる声の元になる音がでます。これは、まだ共鳴していないので、声というよりは、鈍い音にすぎません。

のどぼとけを手で軽く押さえて、声を出してみると、声帯の振動が感じられます。これが共鳴するところの働き(共鳴器官とよぱれる)によってひびき、その人の声らしくなるわけです。

 

 

Q.ヴォイストレーニングでは、声帯の構造や仕組みから教わると聞きました。なぜ声のしくみやメカニズムを知る必要があるのでしょうか。

 

A. “歌うときはお腹の底から声を出せ”とよくいいます。

初心者にとって、これを実行するのは、至難の技であると言えます。言葉の意味するイメージがはっきりとしていないのですから、当然のことです。

まずは、多少なりとも、声を出すための楽器としての自分の体のしくみを、理解するとよいと思います。声が出るときのしくみを知ることです。

とはいっても、休の構造すべてについての専門的な勉強が必要なのではありません。とりあえずは、声を出すときに関係する部分の基本的な知識でよいのです。

これを理解して始めることで、勉強していく上での大きな間違いを防ぐことができます。トレーニングを始めるにあたり、一通りでよいから、声のしくみとメカニズムを理解しておきましょう。

 

 

Q.私の声は、喉で出ているようなのですが、ヴォーカリストの歌っているところをみると、全身を使って歌っているように見えます。どうしたら、体から思う存分、声が出せるようになるでしょうか。

 

A.声が、声帯の振動によってでることには違いありません。声をうまく出すためには、声帯をうまく働かせることとそこで出た声をうまくひびかせることが大切です。声帯だけが声を決めているわけではありません。

人間の体という楽器をバイオリンにたとえてみると、声帯は、バイオリンの弦にあたります。弦を振わせて音をだすわけです。弦を振わせているバイオリンの弓にあたる役目を果たすのが、肺から出る息です。息は肺を取り囲む筋肉の働きによって横隔膜を経てコントロールされています。

声帯そのものをうまく使うには、呼吸をコントロールすることによって、周辺の筋肉の動きも含めて、ヴォイスコントロールを習得していくわけです。ですから、腹式呼吸の訓練が、ヴォイストレーニングに必須となります。

声を大きくしたり、音色をつくりだすのは、バイオリンでいう桐の部分にあたります。ここが共鳴腔と呼ばれる部分です。体の共鳴腔は、口腔、咽頭、鼻腔などの声を共嶋させたり、拡大させる空洞のことを指します。そこを利用して、声をうまくひびかせることが大切です。

 

 

Q.ヴォーカリストは、さまざまな格好で歌っています。前のめりになったり、上を向いたり、走りまわったり、踊ったり。私も、そのようにはでに動きまわって歌いたいのですが、動くとうまく歌えません。どのような姿勢で歌うとよいのでしょうか。

 

A.歌を歌う場合に限らず、姿勢といったときには、①立ったときの姿勢 ②座ったときの姿勢 ③寝ころんだときの姿勢の三つが考えられます。しかし、ステージで歌を歌うときはほとんど、立っているわけですから、基本は立った姿勢となります。ただし、まっすぐ立ったときにうまく声を出すのはなかなか難しいものです。そこで、座ったり、寝ころんだりした姿勢でトレーニングをする場合があります。

歌うときの、理想の姿勢(フォーム)を身につけるのは、とても難しいものです。プロのヴォーカリストであってもほとんどの人が、いまもって課題としているほどです。ましてや初心者が、本など通して、完璧なフォームをマスターするのは、容易なことではありません。

よい姿勢とは、無理のないしぜんでリラックスをした姿勢です。最初は姿勢をよくしょうと思うだけで、体に力が入りやすくなります。足もきちんとまっすぐそろえて、首すじも力で固めてしまいがちです。それではすぐに、首や肩がこり、体全体も疲れてしまいます。大ざっぱに言うと長時間その姿勢で保てないようなフォームは、間違いなのです。正しいフォームを習得するには、まず両足は少し間を開けて(10〜15cm)、つま先を開きぎみ(約60度)に立ちます。肩から腕は力をぬき、手をだらっと下げる感じにします。顔は少し上向きにし視点を定めます。

目線がきちんと定まると、意識が集中しうまくリラックスできます。しかし、上にしすぎると、あごが上がってしまい声が出にくくなります。見た目にもよくありませんので、注意してください。

等身大の鏡の前で、練習するとよいでしょう。自分では正しい姿勢で歌っていると思っていても、そうでないことはよくあります。チェックポイントをきめて、鏡にうつして点検する習慣をつけましょう。

常にリラックスしたフォームを保って歌うのは難しいので、慣れないうちはどこかに力が入ってしまうものです。クラシックバレエのレッスンは鏡張りの部屋で行われます。ヴォーカルにおいても姿勢は声を出すために重要なことです。いつでも、フォームを意識して練習することが、自分のベストなフォームを習得するための近道なのです。どんなにはでに動きまわるステージであっても、まずは、しっかりしたフォームを身につけること、それが基本です。

 

 

Q.私は立って練習をしていると、すぐに疲れます。姿势も悪くなって、声も出にくくなります。むしろ、座ったときの方が声がうまく出るように感じます。座って練習してもよいのでしょうか。

 

A.基本的には、立って歌うのが普通ですが、立った姿勢は最初はうまく声がでにくいものです。イスに腰かけて、上半身からリラックスさせたところから、フォームをつくっていくのもよい方法です。

ただし、きちんと背筋を伸ばし、肩の力をぬいて腕に力を入れないようにすることです。

顔はほんの少し上向きにしてあごをひき、視点を定めてからやり始めてください。

上半身は立っているときの姿勢と同じ状態にします。猫背にならず、外国人がテ—ブルにつくときのように胸をはって、ピンと背筋を伸ばすことです。その状態で声を出してみましょう。背もたれに寄りかかったり、体が前かがみになったりしないように注意します。

イスには浅く腰かけるようにしてください。

座った姿勢が定まってきたら、少しずつ立った姿勢で歌う時間を長くしていきます。座った姿勢が安定してきたら、それをくずさないように立ち、足腰も含めた体全体のフォー厶を整える練習に進むとよいでしょう。

 

 

Q.オペラをみたとき、ある場面で、歌い手が、床に横たわったまま、朗々と歌っていました。声も全くしぜんで変わりませんでした。寝ころんでも歌えるのは、なぜなのでしょうか。

 

A.私たちは、疲れを癒すときや、睡眠をとるときなどは、しぜんと寝ころんだ状態になるものです。この寝ころんだ状態とは、リラックスのできる楽な姿勢なのです。歌うときのフォームも、リラックスをした姿勢という点では共通しています。トレーニングにおいては、寝ころんで声を出してみて、リラックスをした状態で歌う感覚をつかむことは効果的なことです。

特に呼吸法のトレーニングには最適です。腹式の呼吸をマスターしようという場合には、仰向けになって息を吐いてみるのが、一番わかりやすいでしょう。寝ころんだ姿勢で声を出し、体に力が入ってしまうところかないかをチェックしてみてください。

この姿勢で常にリラックスを保って声が出るようになったら、次に座った姿勢、その次に立った姿勢と順に、ステップをふんでマスターしていくとよいでしょう。

正しいフォームで歌うことができるようになったら、どんなフォームでも歌えるようになります。もちろん、喉をつめたり、あごをあげすぎたりしてはいけませんが、基本が身につくということは、少々、状況が変わってもそれに対応できる力があるということです。つまりどんな姿勢でも、体と息と声の結びつきが正しいフォームで使えているから、どんな姿勢でも歌えるわけです。

 

 

Q.日本人の体格やプロポーションもよくなり、食べているものも変わらなくなったのに、どうして声の点では、外国人ヴォーカリストより劣っているように思えるのでしょうか。また、太った方が声が出やすいとか、首が太い方がよいとか、鳩胸でっちりがよいというのは、本当ですか。

 

A.日本人と外国人との比較は、言語学から骨相学までさまざまな分野でなされていますが、私が声の面からみて、大きな差だと思えるのは、日本語を出すときの声の浅さと日本人の声を取り巻く状況、そして姿勢、態度、表現意欲です。

誰かに“あなた鳩胸だねぇ”とか、“でっかい尻だねぇ”などど言われれば、あまりいい気持ちにはならないものです。しかしヴォーカリストを目指す上なら、歓迎すべきことかもしれません。というのは、日本人の埸合、どうしても猫背になりがちで、声を出すのに有利な姿勢をとれないからです。ただ、極端なのはよくありません。

歌うときのよい姿勢を考えてみてください。

足腰はしっかりと体を支え、背筋を伸ばし、顔は心もち上向きです。これを実行すると、極端に言えば、やや鳩胸でっちりの姿整になるともいえます。ただし、あまりにやりすぎると、背筋を張りすぎて固くなってしまうので要注意です。

“鳩胸でっちり”は、理想的なフォームをイメージするときの一時的なたとえだと思ってください。太っていることや首の太さも、声を出すのに確かに有利な要素のひとつかもしれませんが、だからといって単に太っても仕方ありません。

 

 

Q.ヴォイストレーニングをやっていると、下半身がとても疲れます。足がつったり、ひざがガクガクになったりします。何かやり方がおかしいのでしょうか。ステ—ジでも、そういうことがよくあります。立って歌うとすぐに疲れるのです。

 

A.立った姿勢というのは自分の体を支えなければならないのですから、声を出し続けるといった慣れないことをするには、寝ころんだ姿勢、座った姿勢よりも、力が入りやすいのです。

立った姿勢で長時間何かをすることは、歌わなくとも、それなりのエネルギ—が必要なわけです。ですから、立って歌ったり、ヴォイストレーニングをすると疲れるというのは、当然のことでしょう。

しかし、すぐに疲れてしまうというのでは困ります。ヴォーカリストは体が資本であり、体力が勝負なのです。ですから、普段から体力をつけておくことが第一です。いくらプロになろうとしても、すぐに疲れてしまうのでは、ステージはつとまりません。体力がなければパワーのある歌を歌うことも難しいでしよう。

もう一つは正しくない姿勢で歌っていると、疲れやすくなります。リラックスのできていない状態で歌うことになるのですから立って歌うとすぐに疲れてしまうという人は、座った姿勢や、寝ころんだ姿勢での練習から、もう一度やり直してみることをお勧めします。ヴォイストレーニングに関しては、本当のトレーニングを、直立不動でやっていたら、ひざがガクガクになったり、足の筋肉がつっぱることは、よくあることです。体に負担のこないようでは、トレーニングではないといえます。要は、同じ姿勢を固くなに守りつづけるから、いけないわけです。疲れを感じてきたら、軽く柔軟体操やひざの屈伸運動などをやってみるとよいでしょう。トレーニング中に首や手足を動かしながらやるのもよいでしょう。

 

 

Q.私は、練習時間があまりとれないので、いつもすぐに歌い始め、うまく歌えないときは、少しだけ発声練習をやっています。しかしヴォーカルの人から柔軟体操をしたほうがよいといわれました。本当でしょうか。

 

A.歌うということは、体全体で行う運動なので、音楽のパートのなかでも、スポーツ選手や舞踊といった肉体をつかう芸術に近いものです。そういう分野での考え方の方がうまくあてはまることも多いのです。となると、体を柔軟にしておくことが、とても重要なことです。それが自分の体を思い通りに動かせるこつだからです。そうでなくては、正しい姿勢もできません。

首や肩の筋肉が凝っていると、声帯をコントロールする筋肉にも影響が出るので、しゃべるときの声までかれてきます。歌うときにはこの影響がもっと大きくなります。そこで体をマッサージをしたり柔軟体操をして筋肉を柔らかくしておくことは、訓練のできていない声でむやみに歌うよりよほど大切なことなのです。

これは、毎日欠かさずにやるべきことでしょう。リラックスをした状態でトレーニングするためにも体がかたい人やいつも凝っている人は、よく全身の筋肉をほぐしておくことです。柔歎な体を保つことは、ヴォーカリストを目指す人にとって必須条件です。

 

Q.リラックスして歌うように心がけているのですが、どうしても体に部分的に力が入ります。喉も痛くなります。どうすれば、うまく脱力できるのでしょうか。

 

A.極端なときは、足がつるようになったり、お腹や腰が痛くなったりします。

これらの症状があらわれるときは、無駄な力が入りすぎているか、その状態を続けすぎていると言えましょう。歌うときの姿勢が悪かったり、練習時間が長すぎたり、力を抜かないために起こる埸合には注意しましょう。

しかし、ヴォイストレーニングにまだ慣れない状態でやるときにもよく起こることなので、それほど気にしなくともよいとは思います。喉に負担がかからず終わったあとに声がよく出るようになるのが好ましいのです。少々痛んでも仕方ありません。次の日に影響が残っていないのなら、よいでしょう。喉が痛くなったり声が出にくくなるのは困りものです。もう一度、座った姿勢などで声を出す練習をしてみることも効果的ですし、足腰が、リキみすぎてしまうのであれば、片足立ちをしたり、両足のひざを少し曲げて体の重心を落として歌ってみるのも効果があります。

体の一部分に力が入りすぎてしまうときは、このように体の他の部分に意識をもっていくと、力んでいた部分の力が抜けてきます。あるいは、もっと早く力を抜くためにはその部分に逆に力を入れてから抜くという方法もあります。ストレッチ体操などをしてみてください。

 

 

Q.歌うときやヴォイストレーニングをするときの正しい姿勢というのが、皆、いろいろなことをいうのでよくわかりません。いったい、どのくらいのことにどれだけ気をつければよいのでしょうか。正しい姿勢のチェック方法を教えてください。

 

A.歌うときの基本は、しぜんでリラックスをした姿勢です。他に細かい注意もたくさんありますが、これが大原則です。

姿勢のチェック項目を挙げておきますが、一通り,目を通したら、それでよいです。時期をおいて、またチェックしてみてください。無理に、チェックリストに合わせても不自然になるだけです。気づいたらそうなっていたというのでよいのです。

 

・しぜんでゆったりとした楽な姿勢

・顔はいく分上向き

・目はしっかりと見開き

・視線はまっすぐより少し上に

・舌先は前歯の裏。舌の両側を奥歯につける

・口頭はやや後ろに

・下あごを少しひく(うなじを伸ばす)上あごより前に出さない

・肩、首に力を入れない。肩は少し後方にひき、まっすぐおとす

・首はまっすぐ立てる

・胸をはり、やや上方に広げる。胸は広げたまま高く保ち、おとさない

・腕は力を抜いてだらっと下げる

・お腹は引っ込める

・下腹部はゆるめ、内側へ吊り上げる感じ

・背筋はきちんと伸ばす

・お尻の筋肉を肛門の方向へ締める。少し緊張させ上にあげる

・ひざから太モモの内側を前方にまき込む感じで骨盤を前方へ少し出す

・かかとは少し(10〜15cm)開く

・つま先の方を60度程度に開く(内股にしない)

・体重はやや前方(両親指)へ

・重心は開いた足の中心にもっていく

 

 

Q.ステージで動きながら歌うとうまく声が出ないのですが、どのようにすればよいでしょうか。

 

A.声を出すことがしっかりとマスターできていないうちに、体を動かしながら歌うと声が出にくくなるのはあたりまえです。しかし、ステージの上では、直立不動で歌いつづけるわけにはいかないものです。激しい動きをしながら歌おうとすると当然、息が乱れ、声も乱れてきます。多少の動きをつけなから、正しいフォー厶、息を乱さないような練習をしましょう。

まず、上半身と足腰をそれぞれに、安定させる必要があります。上半身が動くと、どうしても声までゆれやすくなりますし、首の周りが楽になっていないとつまったような声になってしまいます。足腰は動いていても、上半身の状態は変えないで呼吸を保っていられなくてはなりません。

寝ころがって、両足を動かしながら声を出してみるとか、腹筋で両足を少しもちあげて歌ってみたりすることも参考になるので、やってみてください。

動きながら歌うと、呼吸を保つことが難しくなります。体を動かすために、ただ歌うより酸素が多く必要になりますから、ブレスの仕方も深く、素早くできないと、息が保てなくなります。これは、「腹式呼吸」をしっかりと、身につけることによって、克服するしかありません。

 

 

Q.ここのトレーニングでは、よく前屈姿勢で、声を出させているようですが、どうしてですか。私は体を曲げて練習すると頭に血が上ぼってしまうのですが、やり方がおかしいのでしょうか。

 

A.正しい声の出し方を知るために私は体を曲げた姿勢(前屈姿勢)でのトレーニングを勧めています。腹式呼吸を身につけるためには、お腹の前の方がやたらと動かず、横隔膜をとり囲む筋肉が全体的に使いやすくなることが必要です。こうすると、息をコントロールする場所が感じやすくなるからです。両手を肩が上がらないようにウエストの位置、わき腹にあてて、体を腰から前方へ少し曲げてみてください。このとき頭を胴体の位置よりも下げすぎると、頭に血がのぼるようになるので、床に水平なところ以上に前屈しないことです。息を吐いて、そのあとしぜんと吸ってみましょう。ウエストのあたりのお腹に空気がスッと入ってくるのか感じられると思います。体を曲げてブレスをすると、胸や肩に空気が入ってしまう(胸式呼吸)のも防げますので、初期の卜レーニングとしては、有効な方法です。このときは、体を前屈させたときに、背中の線と首からの頭のうしろの線がまっすぐ一直線になるようにすることです。前屈したときも上半身は立って歌うときと同じ状態でなくてはなりません。

 

 

Q.歌っていても、いつもブレスが続きません。長く伸ばしたいのに、途中で息が抜けてしまうのです。ブレスが続かないのはどうしたらよいでしょうか。

 

A.他の人に比べて、ブレスが短いのではないかという悩みをもっている人は少なくありません。

肺活量には個人差がありますが、それほど気にする必要はありません。歌うときに重要なのは息の吸う量や吐く量ではなく腹式呼吸を身につけて息を上手に、いかに効率よく声として使うかということなのです。

声を出す原動力は、声帯を振動させる空気なのですから、声を自由にコントロールするためには、呼吸法をマスターしていくことです。実際に声を出して歌う前に、呼吸(ブレス)のトレーニングをそれ以上の時間をかけて、整えておく必要があります。呼吸法を学ばないでは、思うままに声を操れる余裕をもったヴォーカリストになれるはずはありません。ヴォーカリストを目指すなら、まずブレストレーニングを毎日欠かさずに行うことです。 

難しいトレーニングではなく、深く息を吐き、しぜんと吸うことを心がけて生活するだけでも大分、違ってくるでしょう。限られたトレーニング時間よりも、毎日の生活のなかで、常にヴォイストレーニングを意識していることがより有効な訓練になるのです。

 

 

Q.腹式呼吸と胸式呼吸との違いがよくわかりません。先生には胸式呼吸だといわれ、直すように注意されたのですが、どのようにすればよいでしょうか。

 

A.“腹式呼吸”に対して、歌うのには適さないとされているのが、“胸式呼吸”です。簡単にいうと、胸の周りに呼吸した空気を入れてしまう呼吸法です。胸式呼吸を確かめるには、ブレスをしたときに、肩や胸がもり上がるかどうかです。肩、胸が上がるのなら、よくないでしょう。歌う声は「お腹から出す」ものなのですから、お腹からコントロールすることが基本です。

胸式呼吸だと思ったら、両足をかるく開き、背筋を伸ばして立ちます。肩の力を抜いて手をウェストの両わきへあて、そこに空気が入るように少しずつ息を吸ってみましょう。そのとき、肩、胸が盛り上がったり、力が入ったりしてはいけません。

腹式呼吸ができていれば、お腹の周り全体か外側へふくらむのが感じられるはずです。最初はわかりにくいので、上体を前方へ倒してやったり、座ったり、寝ころんだりして、息と体(お腹)との関係をつかむとよいでしょう。

歌うときの呼吸は、このように腹式呼吸が主なのですが、胸式呼吸を全面的に否定しているのではありません。実際には、腹式呼吸と胸式呼吸は分けられず組み合わされているのです。胸部の動きを完全に抜くことは不可能ですから、腹式呼吸が基本とはいえ、兼ね合いの問題です。

呼吸法は急に切り換わるものではありませんから、徐々に、お腹でコントロールできるイメージを強くしていき、全身がリラックスできるようになるまで、日頃から心がけてがんばってください。

特に日本人の女性の場合は、胸式呼吸が普通であるといってもよいくらい、浅い呼吸となっています。スポーツや運動などによって覚えていくのも、一つの手段かと思います。

 

 

Q.歌うときに、テンポが速かったり、伸ばすところが続いていたりして、息が間に合わないことがよくあります。そこで、ブレスのトレーニングの必要性を感じるようになりました。吸う練習は必要ないのでしょうか。どのようにすればよいのでしょうか。

 

A.呼吸をマスタ—するときには、体のどこに空気を入れるかというイメージは、とても大切です。気をゆるめると浅い呼吸になってしまいます。

しかし、吸うためのトレーニングは特に必要ないでしょう。呼吸というものは、吐くことと吸うことのペアで一つなのですから、息を吐けるようになれば、その分はしぜんと入ってくるでしよう。

声は、息を吐くときの声帯の開閉で気流から生じるものです。

声のコントロールは、吐く息の調節によって行われます。

ヴォーカリストのトレーニングは、自分の思い通りに吐く息で声をコントロールするためのトレーニングといってもよいでしょう。

なかには、吸うことを意識しすぎ、息をつかいきったあとに、吐くのと同じかそれ以上時間をかけてがんばって息を吸っている人がいます。しかし、実際は、“吸う”というより“入る”といった感じが正しいです。“花の香を嗅ぐくらいの息”が理想だといわれます。

息を吐いたあと体がバネのように呼応して息を取り入れなくては、ヴォーカリストの歌には、とてもついていけません。吸うなどという意識動作があってはいけないのです。

 

 

Q.歌っていると肩が動きます。これは、よくないと言われました。どうしてでしょうか。また、肩が動くのを直す方法はありますか。

 

A.まず、見た目によくありません。わずかな動きも無駄なものであれば、とても目ざわりなものです。

ブレスをしたときに肩が動くという症状は、浅い呼吸を行っているときに起こります。きちんとお腹に空気が入っていないのです。

激しい連動をするとハアハアと肩で息をします。この肩呼吸は吸うのも吐くのも速いのです。そのためスポーツの後、酸素をすばやくとりいれるにはよいですが、歌のように長く息をコントロールしなければならないものには不向きです。このことに気づいたら、大きな鏡の前でもう一度、歌うときの基本姿勢からチェックしてみましょう。

どうしても肩に力が入ってしまうという人は、ダンベルなど重い物を両手で持ち、足は軽く関いて立ってみましょう。このとき、重い物を持っているからといって肩から腕を力にまかせて固くしないように気をつけてください。重さで前かがみ(猫背)になるのもよくありません。背筋は伸ばし、肩の力を抜いて重さを感じ、地球の重力に自分の体が引っぱられているように意識してみてください。

このときには、足腰がしっかりと地についた感じで、安定したよい状態になっているはずです。この状態でゆっくりと呼吸をしてみてください。お腹の底に空気が入ってゆくのが感じられるでしょう。それができるようになったら、おもりなしでも、同じ状態を保てるようにトレーニングしましょう。少しずつ肩の無駄な動きは取れていくはずです。

 

 

Q.毎日、私は、腹筋連動をしています。腹式呼吸を強化するために、腕立て伏せから、足上げ上体起こしとやっているのですが、上達しているように思えません。腹式呼吸には腹筋運動がよいのでしょうか。

 

A.歌うための体づくりのためには、かつては腹筋運動が有効であると考えられていました。結論から言うと、腹筋を锻えないよりは、鍛えた方がよいですが、腹式呼吸に効果的なトレーニングとはいえません。腹筋運動での筋肉の強化は、どのスポーツの選手にも、当然,舞台で演じる者にも必要です。しかしヴォーカリストにとっては、実際に腹式呼吸で使われる内側の横隔膜に関わる筋肉や助間筋などを锻える方がより直接的なのです。

筋肉の鍛え方は、目的に応じて異なるわけです。スポーツでも、基本的なトレーニングは似通っていても、筋カトレーニングの仕方は種目によって、それぞれ逢うわけです。

たとえば陸上選手とバスケットボールの選手の足の筋肉ひとつをとっても、つき方が違うことからもわかります。速く走ることと、急に止まったりジャンプしたりすることを目的にするときとは、トレーニング方法が違うのはあたりまえです。

ヴォーカリストとは、声をコントロールできるプロです。少なくとも腹筋の強いスポーツ選手が、次の日からヴォーカリストになれることなどありえないでしょう。

ヴォーカリストの声は息によってコントロールされます。その息をコントロールするための筋肉はやはり息を吐くことによって鍛える方が早いのです。

それを支えるために腹筋運動をすることでヴォーカリストの体がつくれるわけではありませんが、適度にお腹の筋肉を鍛えておくことも大切なことです。

簡単な腹筋連動を以下、いくつかあげてみます。

仰向けに寝て両足を少しだけ浮かせるようにします。腰から腹筋で持ち上げていきます。ひざが曲がったりしないように両足をぴったりとつけてつま先まで伸ばすことを心がけてください。

また、仰向けに寝ころがって上半身を起こすというトレーニングもよいでしょう。このとき、両腕は頭のうしろへ組みましょう。他に、腕立て伏せも腹筋を鍛えるトレーニングになります。

仰向けになって、おへそのあたりに本などの重いものをのせて、ブレスや発声をしてみると、腹筋の動きを感じやすいので参考になるでしょう。

 

 

Q.私は体が小さくて肺活量もあまりありません。ヴォーカルとしては不向きのようですが、歌に肺活量は関係あるのでしょうか。

 

A. 「肺活量が少ないから、歌に向いていないのではないか」と悩んでも仕方ありません。確かに、肺活量が大きいにこしたことはありませんが、せいぜい、ないよりはあった方がよいといえるくらいです。

オペラ歌手でさえ小柄な人はいます。女性より肺活量の多い男性がヴォーカリストに向いているわけでもないでしょう。

大切なのは呼吸した空気(呼気置)をどれだけ効率よく声に変えられるかということなのです。息がいくら多く吸えても、それを声として活かせないのであれば何の意味もありません。

肺活量の大きさはヴォーカリストを目指す上での条件にはならないでしょう。そんなことが有利なら、世の中には、大柄な男性のヴォーカリストしかいなくなります。

まず、充分に自分の体を使い切ること、全身で歌えるところまでトレーニングすることです。声帯をいかに少ない空気量で振動させられるか、それをいかに共鳴させられるかで声量が決まってくるのです。

肺活量の大きさなど気にせずにロスの少ない正しい発声法をマスタ—することです。声が人並みに出せる人でヴォーカルに不向きな人はいません。もし、いるなら、ささいなことを不向きな条件だと思ってしまう考え方です。

 

 

Q.私のサークルでは、ヴォーカルをやっている人は、皆、スポーツをやってきた人です。スポーツのできる人は、歌も総じてうまいようですが、何か秘訣があるのでしょうか。スポーツ遇手はヴォーカルに有利なのでしょうか。

 

A.スポーツで体が鍛えられているという点を考えると、歌うことも体を使うことなので共通する点はあります。体力もあった方が有利です。集中力、勝負強さ、人前での経験など、いくつもあります。

そして、何もやったことのない人よりは、ひとつのことを習得するために必要なこと、そして、身につく過程を体験してきたということを知っているということも、有利な条件だけと思います。

しかし当然のことながら、スポーツとは違ったステップを踏まえることが歌うためには必要になってくるので、スポーツ選手が即、ヴォーカリストに向いているというわけではありません。

ただ、歌のためのヴォイストレーニングと、スボーツのためのトレーニングで重なっているものが少なくないのも確かです。

基本条件の一つとして“柔軟な体を保つ” ということがありますが、これに関しても、常に体を動かしてトレーニングを重ねているスポーツ選手にはわかりやすいことです。

しかし、スポーツをやってきた人がヴォーカルをやることが多いということの本当の理由は、性格的に明るく人前に出たがり屋で、ステージでも体を動かせるヴォーカルを選ぶからだと思います。しかも、彼らの多くは楽器ができません。だからヴォーカルをやるのです。

 

 

Q.歌っていると、ときたま息が苦しくなることがあります。たいして大きな声ではないのですが、すぐに声が途切れがちになったり、聞こえないような小さな声になります。ブレスか発声の問題でしょうか。

 

A.充分に息を吸っているつもりなのに、息を吐くとすぐに苦しくなってしまう人は、まず体を鍛えることです。そうでないと、息が短く、余裕のない歌い方になります。これは、体と呼気の使い方の問題です。息を吐くときに酸欠になりやすい人もいます。これは、エアロビクスやジャズダンスなど、呼吸をふんだんに必要とする連動によっても強くなるでしょう。

本当のことを言うと、ほとんどの人は、ヴォーカリストとして息を吐けるだけの体になっていません。ですから、私のところのトレーニングでは、最初はプロレベルの活動をしている人でも酸欠気味になる人が少なくないのです。もちろん本当のプロのヴォーカリストは、そんなことはありません。

 ということは、まず、ここから鍛えなくてはいけないということです。呼気を声に変える効率が悪く、息のロスが多いから、そうなるなら、もう一度腹式呼吸と発声を基本からチェックしていきましょう。

 ウエストの位置のわき腹を両手で押さえて、きちんとお腹に息が入っているかを確認してください。お腹が空気でふくらんだ状態をできるだけキープしながら、少しずつ息を吐いていく練習をしてみてください。

毎日続けていくうちに少しずつ、吐く時間は長くなっていくはずです。声を出して、どれくらい長く伸ばせるかといった訓練もしてください。息もれに注意して、一秒でも長く伸ばそうと心がけて練習をしていきましよう。

このときに注意しなければならないことは、息を、あまりに吸いすぎないことです。苦しくなるほど限界まで吸うと、かえって胸部まで空気でいっぱいになってしまい、うまくいかなくなってしまいます。

 

 

Q.いつもしぜんな声で歌いなさいと注意されています。自分ではしぜんな声でと思っているのですが、録音したものを聞くとしぜんではないような気がします。しぜんな声とはどんな声でしょうか。どうすればしぜんな声がでるのでしょうか。

 

A.しぜんな声というのが、あるわけではありません。あなたにとってしぜんに出している声にしていくということです。この声は、自分でみつけていかなくてはいけません。

一般的には、心身をリラックスさせて出した声です。それは、話し声でも、歌声であっても、しぜんな声に感じられます。

反対に、ふしぜんな姿勢や緊張のなかで発声をすると、どこかに力が入って、ふしぜんな声がになるものです。体が固くなっていると、声まで固い感じになってしまいます。姿勢や感情に左右されるものです。

歌うときの理想の姿勢であるリラックスをした無駄な力の入っていない状態で出された声は、自分で気に入るかどうかは別問題として、その人にとってしぜんな声といえます。この声があなたの基本となる声です。実際に歌うときにも、この声を忘れてはなりません。

しかし、しっかりした訓練ができていないと、歌うなかで、このしぜんな声を保つのは容易ではありません。さらに、日本人の普段の声そのものが、しぜんに出ているとは言い難いところがあります。日本語として、しぜんに声を使えるまでにも相当のトレーニングを要します。

 

 

Q.私は自分ではうまく歌えており、声も充分に出ていると思っているのですが、録音を聞くと、どうもイメージと違っています。録音すると変な声になるのですが、どうしてなのでしょうか。

 

A.自分の本当の声は、案外とわからないものです。というのは、普段、話すときなどに聞いている自分の声は、相手に伝わっている声とは違うからです。声を出すと、一度空気中に出されて、耳の鼓膜を通して聞いている声と、自分の体を通じて内耳から入る声と二種類、同時に聞こえるからです。気導音と骨導音です。

しかし、他人が聞いているあなたの声は、あなたの口から出されて空気中を伝った声です。自分に聞こえているあなたの声と第三者が聞いているあなたの声とは、異なっているわけです。

録音再生したあなたの声は、空間を伝わって録音されていますので、普段、あなたの声として他の人が聞いている声に近い声です。

自分にとっては、聞き慣れない声なので、変な感じがするものですが、この方が正しいと思ってください。ヴォーカリストは、人がどのように聞くかということが問われるのですから、この録音された声がどうであるかが重要なことです。レコーディングをしたときや、マイクを通して伝わる声も、この声です。

ヴォイストレーニングでも、自分の声を録音して、客観的に自分の声を判断できるようになることが必要です。録音もマイクを通すことになりますから、本当の自分の声を自分で聞くことはできません。ヴォイストレーナーや第三者に聞いてもらうことが、ヴォーカルの場合、必要だといわれるのは、こういうことからです。

 

 

Q.私は洋楽をやっています。ところが外国人は、声そのものの魅力、張りや伸びから音質まで全てが日本人とは違うように聞こえます。日本人と外国人の声とは違うのでしょうか。また、そのギャップを埋めることはできるのでしょうか。

 

A.日本人の話す声と外国人の話す声を比べてみてください。言語そのものの違いも関係するとは思いますか、総じて日本人の話し方は声量も小さく貧弱で、話のリズムも平面的でパワーに欠ける気がしませんか。それに対して、外国人は深く体についた魅力的な声で話し、明るくはっきりとしていてリズム感があります。

歌以前の段階でこれだけの差があるのです。これは、ヴォーカリストを比べてみるとさらに感じることだと思います。外国人は、話しているときの声が、とてもしぜんなので、その声を基本にそのまま歌に入っていけるのです。話しているときからリズムがあるので、何気なく口ずさんだだけでも歌になります。いつも単調に話している日本人の私たちより、様になるのです。なによりも、今のポップスは、日本語でなく、欧米の言語の延長でつくられていることが根本的な要因です。

しかし、最近は、骨格や背の高さなども外国人と日本人は変わらないようになりましたから、きちんとした発声を身につけることができれば外国人と同じように声が出せるはずです。普段の話し声もトレーニングしだいで、克服できます。日常生活から、言葉をはっきりと明瞭に話すよう心がけましょう。これが歌にもよい影響を与えていくでしょう。

参考までに、日本人のヴォーカリストの声が外国人に比べ魅力に欠けるのは、基本トレーニングの差だと思います。日本人が日本語を音楽的に使えるようになるためには、言葉のトレーニングをしっかりとしなくてはなりません。それをいい加減にして、すぐに歌うために、くせをつけた声の出し方を覚えたり、変にひびかせてしまうのです。そのことが体からの声を出すための妨げとなっていることが少なくありません。

 

 

Q.私はハスキーな声にあこかれています。喉をつぶしたり、わざとそのような声にして出していたことがあるのですが、どちらもうまく続きません。そのうち普通に歌っているときも、声がかすれるようになってきました。大丈夫でしょうか。

 

A.声は、声帯振動によって生じるものです。声がかすれる場合、発声障害を起こしているという可能性も考えられます。悪い状態で歌いすぎると喉に炎症をおこしたり声帯結節ができたりしやすくなります。この場合、声(声帯)を休めて、治るのを待たねばなりません。そのまま歌い続けると、さらに悪化してしまうので注意してください。

 また、他の原因で声がよく出ないということも考えられます。炎症やポリープなのか、単に疲れや発声の仕方が悪いためなのかを見分けるためには、充分に声を休めたあとに、低い声や高い声、裏声などがかすれずに出るかどうかでチェックするとよいでしょう。

声のかすれているときは、ハミングが効果的です。まず口を閉じて、自分だけがどうにか聞き取れるくらいの小さな音量でハミングをしてください。このときは、メガネを止める鼻の位置を意識するようにします。目はよく開き、ほおを上げるようにややほほ笑んだ感じにします。この状態でハミングが乱れないようにできるようにします。

それができたら、簡単な音程をつけた練習をしてみましょう。ソファミレドの音階を自分の歌いやすい音程から始めて半音ずつキ—を上げていきます。このときも♪=6O以内くらいにゆっくりとハミングしてください。ハミングは、声帯がうまく合わさらないとできないものなので、この発声練習が無理なくできるときは、声帯は正常だということがいえます。

ハスキーな声というのは、普通のヴォーカリストよりも、タフな喉が必要、体を使える人でなくては、出せません。大変に難しいものです。

まずは、正攻法で歌えるところを勉強してください。トレーニングでは、決して喉をつぶそうとしたり、無理につめて、からした声を出そうとしてはいけません。

一時、そのような声が出ても、少し休むと、すぐにもとの弱々しい声に戻ります。また、音域音量とも制限されてしまうのです。これは、間違った使い方をしているだけです。やりすぎると自分の喉をつぶす原因になります。

 

 

Q.私は喉が弱くて、大きな声で歌えません。二、三曲歌うと、もう休まなければ持ちません。声を出すとすぐ喉が痛くなるのですが、喉を強くする方法はないでしょうか。

 

A.カラオケをしたり、スポーツ観戦などで大声を張り上げて応援をした後は、誰でも多少喉が痛いと感じた経験があると思います。これは普段出さない大きな声を無理をして発声し続けたために起こるものです。これと同じことが起きているのでしょう。

しかし、歌ってすぐに喉が痛くなるのでは、ヴォーカリストは務まりません。しぜんな声を出しているときは、喉への負担も最小限ですみますから、喉がすぐに痛む場合は、しぜんな発声ができていないということになります。

レーニングのときのイメージとしては、声帯(喉)ではなく、お腹(横隔膜のあるところ)から声を出す感覚で発声することです。実際に声帯を振動させる原動力となる息を送り出し、コントロールしているのはお腹であり、喉をリラックスさせようと思っても、喉そのものをコントロールすることはできないからです。

声量を増やすために、喉を無理に鳴らそうとしている人をよくみかけます。しかし、声量は息の使い方と共鳴で変わってくるもので、喉をいかに鳴らすことができるかでは、ないのです。無理に力づくで声帯に負担をかけては痛めるだけです。

喉は、トレーニングで確かに強くなります。それは喉を酷使するからではなく、お腹からの発声で、毎日トレーニングをしていった結果です。喉をつぶしてよくなったと言っているヴォーカリストがいますが、決して、まねをしないようにしてください。

 

 

Q.僕の声は、生まれつき小さくてひびきません。クラスのなかでも小さいほうです。しかし、歌をうたっていきたいので、声を大きくしていきたいのです。そのために弱々しい声を直したいのですか、どうすればよいのでしょうか。

 

A.他の人に聞き取れないほどの弱々しい声(日常的な会話に不自由する)しか出ないのならば、声帯に異常があるということも考えられるので、一度、医師に相談してみた方が安心でしょう。

でも、思い通りに声が出ないという程度であれば、その必要はありません。声は個人差の大きいものです。声量や声質は誰一人として全く同じという人はいません。声が太いと力強く、声が細いとどうしても弱々しく聞こえるものです。

ですから、声か細い人は、それを生かした方向でトレーニングをしてみるとよいのではないでしょうか。細くてもよく通り、張りのある声であれば、通用します。いくら太い声で声量があっても、ただ怒鳴っているだけでは、誰も耳を傾けてくれません。

生まれもっている声質そのものは変えることは難しいのですが、可能です。声そのものをトレーニングしている人さえ稀ですから、まずヴォイストレーニングで充分に伸ばしていくことを考えるようにしましょう。最初は、言葉やせりふのトレーニングでしっかりした声を出すことを心がけてください。

 

 

Q.歌のなかで言葉の終わりが長く伸びてしまったり、不安定になってしまい、どうもうまくいきません。そのために、歌全体がひきしまらないのです。語尾がうまく切れず、音程が不安定になるのを、どう直せばよいでしょうか。

 

A.これは“ブレス”に深い関わりがある問題です。ブレスが浅いと、一つのフレーズの終わり頃には、声を保つことも難しくなり、音程やリズムが狂いがちになります。語尾がうまく切れないのも吐く息に充分な余裕がないからです。息が一定に保てなくなると、声が揺れて音程が不安定になります。多くの埸合は音がフラット(下がる)します。

呼吸をしっかりとマスターしていれば、呼気を外へ送り出すのを一瞬に止めることもできます。ですから、言葉の語尾もフレーズの終わりで、ふしぜんにならずに切ることができます。息の量も自在にコントロールできるので、音が不安定になることもありません。

これは、発声と呼吸をトレーニングすると、解決できるでしょう。息を使い切ってしまわず、うまく配分することも大切です。ただ、語尾を切るために口先で息を止めてしまわないことに注意しましょう。息は必ずお腹でコントロールすることです。

 

 

Q.ヴォーカリストとして、メロディやリズ厶、音程のトレーニングをしています。言葉にもトレーニングはあるのでしょうか。また、言葉のトレーニングは必要なのでしょうか。

 

A.言葉のトレーニングは、役者、アナウンサー、その他にも言葉を使う仕事についている人が行っているトレーニングです。ところがヴォーカリストは、ほとんど、この卜レ—ニングをしていません。音楽スク—ルでも、言葉のトレーニングには、無関心のようです。これは大きな間違いです。

 歌は、音楽を演奏することにおいては他の楽器とかわりませんが、それだけでなくメロディ—に“言葉”をのせることができるのです。ヴォーカリストが歌を歌うということは、言葉をメロディーにのせて語りかけるということです。ヴォーカリストにとって、言葉はとても大切な要素です。

しかし歌を歌うときの言葉は、音程やリズ厶をつけなければならない分、相手に伝えるのが難しくなります。そのための基本として、言葉のトレーニングをしっかりとやらなくてはいけないのです。

言葉のトレーニングの第一段階として、日本語の音訓練から始めましょう。日本語は、アイウエオの5つの母音とたくさんの子音の組み合わせ、ん(撥音)、きゃ、きゅ、きょなどの拗音で構成されています。1複雑な音の組み合わせからできているのです。これらを充分にトレーニングしておきましょう。

特にアイウエオの5つの母音は、口先での明瞭さではなく体の奥から声を発する感覚で、深い母音をマスターしていくことです。

日本語以外の言葉、例えば英語などの歌を歌う場合は、日本語の音をもとにして、外国語をつくろうとすると必ずふしぜんなものになってしまいます。AIUEOといっても日本語でのアイウエオと外国語の母音では全く違うからです。

英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語など、どの国の言葉で歌うにしても、日本語の母音にこだわらずに、その国の母音を身につけることから始めることでしょう。私自身は、日本語をしっかりと音楽に使えるようにしていくには、イタリア語あたりをマスターすることから始めるとよいと思っています。

 

 

Q.歌っていても、言葉がわからないといわれることがよくあります。もごもごと口のなかでこもってしまったり、言葉がはっきりとしないようなのです。言葉がはっきりしないのは、どうすればよいのでしょう。

 

A.まず、口をしっかりと動かし、開けることです。そうしないと声は前にでません。あるいは逆に、言葉をはっきりと言おうとしてむやみやたらに口を大きく開けすぎていないかを考えてみてください。

口をいくら大きく開けてもムダに大きく開けている場合には、かえって平べったい口先だけの声になり、実際に使いにくい声になります。歌のための発声ですから、お腹から声を出すのが基本です。

 試しに口先はあまり開けずに、口の中を開ける感じでAIUEOとお腹を意識しながら声を出してみてください。少しこもった感じになるとは思いますが、口を開けているときょり、口の奥の方でしっかりと共鳴しているのがわかるでしょう。

始めから、すべての言葉をはっきりと発音しようとしすぎると、口がパクパクするだけで、音程をとってメロディーにのせるだけで精一杯となり、本来の言葉の持ち味やイントネーションを生かせなくなることが多いようです。

ですから、個々の音の訓練をするとともに、体から言葉を言ってみることをトレー二ングすることです。体から言葉が言い切れるというのがヴォーカリストの基本だということを忘れないでください。

早口言葉のような練習も、それをふまえた上でなければ効果はありません。まずは深くひびきのある声を出すことの方に重点を匱いてトレーニングを行ってください。

 

 

 

通信教材コメント  by  スタッフ

 

 

全体的にただ歌っているだけになっています。

歌の解釈も必要な要素のひとつであると考えてほしいものです。

ほとんどの人がロボットに歌を歌わせているのを同じ状態です。

ただメロディを追って言葉にのせて音を出しているだけにすぎません。

人間が歌うのですから、もっと感情があってもよいはずです。

いえ、なくてはならないものです。もっと詞の内容にのめり込んでほしいと思います。

 

 

たそがれマイ・ラブ」について

 

ひとつの愛が壊れていく過程と季節の移り変わりによって変化したその後の状況が描かれています。

一コーラス目では、今までとても幸せなときを過ごしてきた主人公が、急に訪れた「運命」によって、好きな相手と別れなければならなくなってしまったときの驚き、

二コーラス目では、数ヶ月後の冬の状況で、壊れていく愛への未だ断ち切れない気持ちを歌っています。

この「運命」ですが、さまざまなキッカケを考えることが可能です。

たとえば相手の人が「婚約を取り消したい」と言い出した理由が、ほかに好きな人ができてしまったとか、不倫の恋とは知らずつきあっていたが相手の家族にばれてしまった、などいろいろなことが考えられると思います。

以上のことをもとにじっくりと考えてみましよう。