一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

続けるということ   141

続けるということ   141

 

 

何かが身につく人、ものごとがなしとげられる人と、そうでない人との差は、はっきりしている。才能とか素質のある人は広い世の中にいくらでもいる。そんなものは賴りにならない。しかし、それを生かすところまで高める努力を続けられる人は思いのほか少ない。相当な練習量をこなし、“まだまだ”と思うか“これで精一杯”と思うかの差が長い時問が立ってくると、全てを決しているような気がする。

ハングリー精神、飽くなき自分の可能性への探究、それを求める人生、引き受けることは、一時の喜びをめざすとともに、それまでの長い苦しみを背負うことになる。しかし、この苦しみが、かけがえのない楽しみであり、生の充実感であることをそういう人は気づいている。要は生き方の問題なのだ。

稽古場から、単に全てを教えてもらえることを期待しても、そんなことで学んだつもりになっているものはどこにも通用しない。稽古場であっても、路上であっても自分の立つ場所と立っている間を芸となる空問と時間にできないもの、しようとしないものが一体何を得られるのだ。

 

 

 

自分自身に対してプロであること

 

自分があこがれているプロと自分と技術、生まれつき資質が違うと思ってしまうと、絶対にプロには近づけません。

あなたとプロの間にあるのは資質や人種の違いではなく、プロに至るまでのキャリアやイメージの違いなのです。あこがれているプロをいくらまねてもしかたありません。あなたは、あなた自身をプロとして通用するレベルへつきつめていくしかないのです。しかし、プロとの基本的なカの差眈、確かにあります。

その間を埋めるためには、自分に何がたりないのかを把握しなければなりません。

 

まず喉をはずして歌ってみます。ドレミまではついていけても、ファソラがついていけなかったら、練習しなければならない問題点はミとファのところ、ということになります。

 

その問題点は、毎日違ってくるはずです。調子の悪いときには、昨日出たところが出ないということもあるでしょう。その時々に応じて自分の問題点を考え、具体的にアレンジし、それを自分に課してトレーニングとすることがプロへの道です。これは面倒くさいことですが、そうしないと力は伸びていきません。機械的にヴォイス・トレーニングを繰り返しても、それは気なぐさみにしかすぎないのです。

 

練習時に自分に対してどれだけ厳しくチェックができるか。これが練習のポイントです。その人が練習で伸びるかどうかの違いとなります。初めはわずか2、30しかないチェックポイントも、やっているうちに100、1000に増えていくはずです。すると、歌っているときに、「ああ今眈7箇所の失敗があった」などと自分で分かるようになります。

 

プロでも完壁に歌えるのは何十回に一度ぐらいのものです。アマチュアに聞かせても、その7箇所は全然気づかなかった、ぐらいになったらプロと言えるでしょう。そういうことを繰り返していくうちに、ほかの人に分からない、自分だけの間題が自分の中にできてきます。

 

そして、それをつきつめていくところから、それがその人間のアーティストとして。価値や個性になっていくのです。プロとはまず、自分に対して、プロとしての厳しい基準をもつて判断しながら、トレーニングをしなくてはいけません。

(それを手伝うのが、ヴォイストレーナーなのです。)