一流になるための真のヴォイストレーニング

福島英とブレスヴォイストレーニング研究所のレッスンアンソロジー

前期発表会を終えて ミルバ 821

前期発表会を終えて    821

 

 ライブにはなり切れなかったが、いろんな意味で、ところどころ、キラめくところのあった発表会であった。そのおかげで、140曲聞いても、生還できてほっとしているのが、正直なところだ。

当日のコメントについては、近く転載する。

 

 それにしても、客の反応はストレートで正直なものだ。たとえ、客がここの自分の出番を控えた人であっても。

 よいステージだと、しぜんと一人の客になる。

 今日、君は何人の客を勝ち得たか。

 

 まだこの場に異和感を感じ、のれない客の方が悪いと言いたげなステージがみられた。

条件は同じであり、音響面などでかなり。なこともあったが、それに左右されないどころか、とっさに活かせた人もいた。だからこそ、“ライブ”であったろう。

 

 

 出るだけで拍手がきて、音声も表現もどうでもよくても、のってくれる場を求めている人は、態度を改めた方がよいだろう。

(それには、そこまでの“実績”[日本ではTVに出て顔を売るとか]が必要である)。あるいは、仲間うちの仲よしライブがよい)。

 

場を成り立たせることを問うためのステージである。

ギブするまえにテイクを求める君の出番など、誰も待っていない。

 

 “一般”に通じさせるために力をつけようとしているはずなのに、

それが、プロ気取りでは、MCでも伝わらない。反応は、冷たかったろう。

“この”ステージを甘くみないことだ。

ここでは、客はプロとしての歌、MC(という音声)を聞きたいのだから。

 

 

 もちろん、それさえわからない人を除いては、あの場に立つとMCさえ、そう簡単にできないことがわかる。余計なことを言わないのは、賢明だ(勘がよい)。

 

 大トリのNくんのMCは、秀逸だった。

そこで、そのあと、私もいらぬリップサービスをしてしまった。

ステージをする人が普段よりMCの材料を集めておくのは、あたりまえだ。

 

 

 どこよりも真剣に4時間×2、聞いてくれているここの客に、ため口をきく人は、

真剣だから-そう簡単に客ののらないことを学ぶ場があると幸せに思って欲しい。

それが、あなたを育ててくれる本当の客というものだ。

 

 皆がプロの客になりつつあるのは、よいことだ。

プロの客は、プロの歌い手を待つ。

そしたらやがて、日本にもよい歌い手が生まれるだろう。

日本もようやく大人の国になる。そういうことだ。

 

 同じ客をしっかりとのせている人がいた。

よいものは伝わり、人の心を動かし、一つにすることを伝えていた。

そのステージに対しては、私も拍手を送りたい。

 

 

 

 

 

ミルバ

 

あなたは、私の生まれるまえから歌っていた。

その頃の日本ですでにその名は知られていた。

あなたをみたのは、それから20年、学生の頃だった。

そして、その2倍の年月が経とうとしている。

なのにあなたは、今もそこに立っている。

歌っている。

 

皆はあなたを知っている。

しかし、知らない人も多くなった。

ビルラもシナトラも逝き、

今日は新しいホールだ。

 

あなたは僕を知らない。

僕はあなたに力を得た。

 

あなたの歌声は世界をめぐる。

あなたの力を封じ込めたレコードは、世界をめぐる。

そして、あなたも世界をめぐる。

 

あなたは僕を知らない。

でも、もっとあなたが知るべき人は、いるはずだ。

 

 

昔、あなたから盗もうとしたことを

“ディーバー”の少年のような日を

僕は思い出していた。

あれから20年、いろいろと変わった。

けれど、あなたは変わらない。

僕も変わらない。

そのことを大切にしよう。

そう歌い続ける。

あなたはいつもと変わらず、

全身で、いつもこんなにも多くのものを伝え続け、

残してきた。

 

あなたにとって、この世界はどうみえるのだろう。

あなたの眼に、東京はどううつるのだろう。

そして、この僕は-。

 

日本からきた一人の坊やに

海外のアーティストは皆、親切だった。

僕はあなたのまえでは、坊やのまま。

 

かつて、この深くて遠い世界を身近に、

手玉にとってさし出してくれたミューズ。

同じホールの空気を

同じ鼓動の音を

同じ2つの耳で聴きながら

今宵もまた、逢瀬。

 

きっと僕は、好きではなかったはずだ。

あなたの作品も歌も音楽も-。

まじめすぎてスキのないその歌に、

本当にひかれたことはなかっただろう。

 

なのにどうして、いつもここであなたを待つのか。

あなたの熱烈なファンと一緒にいるのか。

 

それがいつもわからなかった。

あなたの声や技術やステージを盗みにきた。

あの頃の-

僕の欲しかったのは

そんなものでしかなかった。

あなたのファンに、

僕はただ、なりたかった。

ただのファンに。

 

そして、その歌を聴きたかった。

 

なのに、あなたは-それを拒むかのように

いつも、偉大だった。

僕は、あなたの心が欲しかった。

 

(それにしても、TVにも滅多に出ない、

遠い国の'60年代のスターを支える日本の客に

は感謝したい。)